| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-413  (Poster presentation)

ウチダザリガニ捕獲における植物性誘引餌の嗜好性の比較
Comparison of vegetable baits for trapping crayfish (Pacifastacus leniusculus)

*村林宏, 泉咲良, 小川陸人, 土赤桂未(日赤北海道看護大学)
*Hiroshi MURABAYASHI, Sakura IZUMI, Rikuto OGAWA, Yoshimi TSUCHIAKA(JRC Hokkaido Col.)

発表者は第65回生態学会で、北海道北見市仁頃川上流での特定外来生物のウチダザリガニ(Pacifastacus leniusculus,以下、ウチダ)の動物性の餌を用いた捕獲効率に関する発表を行った。本研究では同所において、植物性の誘因餌を用いて捕獲調査を行った。
ウチダ捕獲用漁具としてモンドリを用いた。誘引餌として、臭いの強い糠団子、味噌、玉ねぎを使用した。一回の誘引餌量はお茶パックに入る程度(約10g)とした。設置する期間は24時間程度として、4つの地点ごとに、それぞれの誘引餌を入れたモンドリを3個1組として設置した。調査期間は令和元年9月23日から同年10月5日にかけて行った。
本調査の結果、それぞれの餌でのウチダの総捕獲数は、糠団子で181個体、玉ねぎで153個体、味噌で195個体であった。Tukey-Kramer検定の結果、3種の餌によるウチダ捕獲数に明らかな差は見られなかった。餌ごとの捕獲個体の雄雌差は、玉ねぎ(t検定、p<0.05)を使用した際に他の餌と比較し、雄の方が有意に多く捕獲された。
結果から、これら3種の餌の臭いに関して、どれもウチダの嗜好性に差が無いと考える。3種の餌のうち、玉ねぎを使用した際は、明らかに雌よりも雄の方が多く捕獲された。甲殻類の雌はフェロモンを分泌し、それに雄が誘引されることが知られている。そのため、玉ねぎの匂い成分が、ウチダ雌が分泌するフェロモンに似ていた可能性が考えられる。一方で、調査時期となった10月は雌が抱卵する時期となり、積極的な活動を控えることから、雌の活動変化という要因も考えられる。1回あたりの誘因餌(約10g)にかかるコストは、糠団子で42円、玉ねぎで17円、味噌で22円であった。本研究の結論として、ウチダの捕獲効率、混獲の少なさ、コストを勘案すると、餌は玉ねぎを使用することが最も効率が良いと考える。


日本生態学会