| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-415  (Poster presentation)

グリーンアノールの誘引・忌避音声の探索:Y字管を用いた行動実験
Exploration of attractive and aversive sounds targeting Green Anole: Y-maze behavioral tests

*内藤梨沙(東京農工大学)
*Risa NAITO(Tokyo Univ of Agri and Tech)

グリーンアノールは1960年代半ばに小笠原諸島に移入し、小笠原固有の生態系に多大な影響を与えている。現在は主に粘着トラップによる駆除や排除柵による在来生物相の保全が進められているが、在来生物との混獲や維持管理にかかる労力の増大、低密度化に伴う捕獲率の低下が問題となっており、より効果的な防除策の開発が必須となっている。グリーンアノールは声を出さないとされるため、今まで聴覚に訴える防除の研究は行われてこなかったが、本種は発達した聴覚を持ち、それを利用して捕食者からの退避、捕食対象生物の認識等を行っている可能性が示されている。そこで、本研究では聴覚を利用した新たな防除策の提案に向け、グリーンアノールが誘引される若しくは忌避する音声の特定を目的とした。誘引・忌避効果を持つ可能性のある音声として、アブラゼミの鳴き声(大きい音、小さい音)、ハエの羽音、ツミの飛翔音、草刈り機を使用している音、ビニール袋をこする音の6つを収集した。Y字管の両端に設置したスピーカーの左右いずれかから候補音声を流し、Y字の分岐点手前の待機場所で静置されたアノールが左右どちらのトンネルに進むか、または待機場所に留まるかを記録した。またどちらのスピーカーからも音声を流さない、コントロールの実験も行なった。オス4個体、メス9個体で行動実験を行なった結果、ツミの飛翔音とアブラゼミの鳴き声(大きい音)を流すと待機場所に留まり、トンネルを進む場合は草刈り機の音と反対のトンネルへ進む傾向がみられた。音声を流さない場合は左右の選択性に偏りは見られなかった。以上の結果より、誘引効果のある音声については新たな候補音声を探す必要があるが、捕食者の音声や機械音が忌避効果を持つ可能性が示された。


日本生態学会