| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-416  (Poster presentation)

沖縄県におけるヒアリの侵入・蔓延時に推定される経済的損失
Potential economic impact of invasion by the Red Imported Fire Ant Solenopsis invicta in Okinawa, Japan

*青山夕貴子(沖縄県環境科学センタ), 吉村正志(OIST), 小笠原昌子(OIST), 諏訪部真友子(OIST), Evan P. ECONOMO(OIST)
*Yukiko AOYAMA(Okinawa Pref. Env. Sci. Cent.), Masashi YOSHIMURA(OIST), Masako OGASAWARA(OIST), Mayuko SUWABE(OIST), Evan P. ECONOMO(OIST)

2017年、国内で初確認されたヒアリSolenopsis invictaは、最悪の場合、人間を死に至らしめる毒アリとして広く知られるようになった。一方、ヒアリが甚大な経済的被害をもたらす外来種であることは、日本ではあまり話題になっていない。本研究では、ハワイにヒアリが侵入・定着した場合の経済的損失額を推定した既存文献をもとに、沖縄県にヒアリが侵入・蔓延した場合の経済的損失額を推定した。試算は、行政による根絶や分布拡大防止のための積極的な対策が行われず、ヒアリは沖縄県の生息可能な地域全域に拡大したと仮定して行った。その結果、市民生活や農業、インフラ整備、ゴルフ・リゾート等の娯楽に係る損害と、行政による最小限の対策費用を足し合わせた直接的な経済的損失は、約192億4,800万円と算出された。またヒアリによって阻害される、地域住民および旅行者による野外活動の経済的価値は、約246億1,000万円と算出された。合計で、年間の損失額は約438億5,800万円と推定された。本試算結果は、ヒアリ対策の必要性や予算を検討するにあたって、その経済的インパクトを評価する重要性を示すものである。ただし、日米間の社会構造の違いなどのため評価しきれなかった部分も多く、日本におけるより正確な被害額の推定のためにはさらなる精査が必要である。


日本生態学会