| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-424  (Poster presentation)

宮城県の農耕地周辺におけるアレチウリの分布と生活史
Distribution and life history of Sicyos angulatus around farmland in Miyagi Prefecture

*大川茂範, 滝沢浩幸(宮城県古川農業試験場)
*Shigenori OKAWA, Hiroyuki TAKIZAWA(Miyagi Furukawa Agr. Exp. Sta.)

特定外来生物アレチウリは,大豆ほ場に侵入すると,その旺盛な繁殖力により数年のうちにまん延し,収穫不能に至る雑草被害が発生しうるため,農耕地への侵入経路を把握し,侵入初期段階で防除することが重要である。そこで,農耕地周辺におけるアレチウリの管理方針策定に向けた基礎的知見を得るため,河川に隣接した大豆ほ場に注目し,河川法面・畦畔・ほ場内における,アレチウリの発芽から結実までの生活環を調査した。
調査地Aは河川下流域の堤外地の大豆ほ場で,ほ場畦畔と低水路法面が接している。調査地Bは河川中流域堤内の大豆ほ場で,堤防を乗り越えたアレチウリの群落が迫っている。調査地Cは河川中流の橋梁に接続する道路の法面で,隣接ほ場は水稲作である。調査時期は2019年の5月中旬から10月下旬までとし,2週間毎に生育ステージと生育量,管理・攪乱の有無を調査した。
 A,Bの大豆ほ場は前作収穫後に耕起されており競合する植生がない裸地状態で,5月中旬にはアレチウリの発芽が始まった。畦畔や河川法面・道路法面でも同時期には枯草や他種植生が生い茂る下から発芽していた。ほ場内や畦畔のアレチウリは6月中旬の大豆播種前の除草・耕起作業による消失前には蔓化(巻きひげの抽出と匍匐)が始まっていたが,大豆播種後は直ぐに再発芽し7月中旬には蔓化していた。調査期間中に攪乱のなかったA河川法面とB,Cでは出芽の盛期は6月中旬で,7月下旬まで確認された。出芽個体は2週間程度で順次蔓化し,7月中旬以降には周辺の植生に押しかかり優占化した。開花は8月中下旬から始まり9月中旬には結実が確認された。断続的に除草管理を受けた大豆ほ場内・畦畔でも残存・後発個体が9月中旬には開花した。調査地Aでの着生種子数は,大豆ほ場内で㎡あたり21粒,畦畔93粒,河川法面328粒と明確な差があり,開花前8月中旬までの刈り払いや抜き取り防除が有効であった。


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