| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-21  (Poster presentation)

高崎山ニホンザルの利き手に関する研究 2
Study of the Dominant Hand in Japanese Macaques at Takasakiyama (2)

*守田駿希, 清水秀宇(大分舞鶴高等学校)
*Toshiki MORITA, Hidetaka SHIMIZU(Oitamaizuru High school)

本校科学部生物班の2017年のニホンザルの利き手の研究では、伊谷(1955)の「高崎山のニホンザルの多くが利き手を持つ」という先行研究を踏まえて研究を行い、高崎山のサルが撒かれた小麦の粒を左右の手を同様に使用して拾う行動を、「ニホンザルは先天的に利き手を持つが、利き手と反対の手の機能を発達させて両手を効率的に使うようになる」とした。しかし、私たちは、ヒトが先天的に利き手を持つ要因とされている左脳と右脳の構造の違いがニホンザルの脳では認められないことなどから、ニホンザルが先天的に利き手を持つとされていることに疑問を抱いた。そこで、先天的なよく使う手を「利き手」、後天的に獲得されたよく使う手を「優先手」と定義し、高崎山のニホンザルが先天的な「利き手」を持たないことを検証するために0歳児の前肢の使い方調査を行った。2019年5月以降に生まれたB群の生後2週~12週の0才児48個体を対象に、サルが体の正面にある物をつかむ際に使用した手の左右を各個体10回の行動について調査すると、有意に左右どちらかの前肢を使用する個体は見られなかった。さらに、0才児3個体を対象とした約22週間の継続調査でも「利き手」は見られなかったことから、ニホンザルは先天的な「利き手」を持たないことが明らかになった。また、サルがどの発育段階で後天的に「優先手」を獲得するのかを確認するために、年齢別に前肢の使い方調査を行った結果、4~5才児以上の個体で0才児との有意差が認められた。さらに、行動別の優先手の獲得の有無を確認するために、高崎山群でよく行われている採餌行動や石遊び行動における手の使い方調査を行った結果、採餌行動や石遊び行動においても一部の個体が左右どちらかの手を優先的に使うことが分かった。これらのことから、高崎山のニホンザルは先天的な「利き手」を持たないが、一部の個体が後天的に「優先手」を獲得していることが明らかになった。


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