| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-25  (Poster presentation)

紀南地方でのオカヤドカリ類の分布を分ける要因
Key factors in the distribution difference of Coenobita in Kinan district

*上田柊大郎, 原山河, 鈴木颯大(串本古座高等学校)
*Shutaro UEDA, Sanga HARA, Hayato SUZUKI(Kushimoto-Koza high school)

オカヤドカリ類とは、熱帯域に広く分布するヤドカリの仲間で、日本では沖縄や小笠原諸島の海岸付近の他、九州~紀伊半島南部にも生息している国の指定天然記念物である。
我々は2018年に、紀南地方でのオカヤドカリ類の分布について調べた。その結果、潮岬を境とし西側と東側でオカヤドカリ類の分布に差があることがわかった。その分布の差を作る要因がそれぞれの海岸の砂にあると考えたため、私たちは今回の研究を行うことにした。
 実験をして確かめたいことは3つある。1つ目は、『気温・地温が何度になれば砂に潜るのか』ということ。2つ目は、『砂粒の大きさによって越冬に支障がでるのか』ということ。3つ目は、『オカヤドカリが確認されていない潮岬より東側の海岸の砂でも越冬は可能なのか』ということである。まず最初に、潮岬より西側の浜の砂と東側の浜の砂を、それぞれ砂粒の大きさで計4種類に分けた。そして、4種類の砂を別々の筒の中に詰め、その中にオカヤドカリを入れたものを恒温機内に設置し、温度を実験の度に徐々に下げた。
 また以前2019年夏に同様の実験を行ったが、恒温機内の気温を変化させると砂の温度(地温)も同じように変化してしまった。これでは気温は変化しても地温はあまり変化しない実際の浜とは状況が異なる。そこで筒内の砂の温度を一定に保つような機械を筒内の砂に埋めて2020年に再び実験を行った。
 2019年の実験では、①粒径が約3mmより小さいと潜りやすいということ ②オカヤドカリには寒くなると砂に潜るという本能があるので、砂の中が寒くても潜りやすければ潜るということがわ  かった。
つまり、砂の粒径がオカヤドカリの越冬に影響している可 能性が示された。2020年の実験は現在行っている最中で、主に実験を浜全体で考えて行っていたものを、浜のより細かい部分に着目して実験を行うことに変更した。


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