| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-38  (Poster presentation)

守れ!ふるさとのヒダサンショウウオ ~ 産卵行動から繁殖への取り組み ~
Observation of breeding in Hynobius kimurae

*尾関将成(岐阜県山県市立富岡小)
*Syousei S OZEKI(Tomioka Primary school)

ヒダサンショウウオHynobius kimuraeは,中部地方以西の本州に分布する日本固有種で,サンショウウオ科サンショウウオ属に分類される.環境省ならびに岐阜県のレッドリストで準絶滅危惧に指定されている.
最初に「飼育繁殖の研究」を行った.3年前から野外調査地点A(標高130~150m)に,ヒダサンショウウオの幼生が見られなくなった.そこで,100均グッズで自作の産卵ケースを考案した.そのケースを90㎝の水槽内に8セット並べた.調査地点B(標高170m)でメス3個体を捕獲した.その全てが,この自作の産卵ケースで産卵した.その際,受精率を上げるために,高富中学校生物部が撮った産卵行動のビデオ,5本を分析し,メス1個体にオス2個体で産卵させることがベストであると考えた.その結果,メスの3個体が産卵した卵の受精率は98.6%(卵72個の内、受精卵71個)を記録した.この年,調査地点C(標高180~190m)で見つけた自然産卵の受精率78.9%(卵113個の内、受精卵89個)を遥かに上回った.受精卵の71個は全て孵化し,幼生として成長した.5月と6月の2度,調査地点Aに放流し,6,7月も幼生を確認することができた.以上の研究から,飼育繁殖は有効であると考えられる.
次に,「野外産卵場所の環境調査」を行った.飼育繁殖では,渓流の水温より4~5℃高い10℃(高富中学校生物部が求めた産卵適温)で産卵している.そこで,産卵する場所は,渓流の水温より高いのではないかと考えた.過去に産卵が確認された10か所の水温を毎週測定した.その結果,産卵した場所では,約9~11℃の湧水が常に出ていることがわかった.また,湧水の水温は一定であることがわかった.このことは,卵の発生にも適していると考えられる.
さらに,「集団産卵による飼育繁殖の研究」に取り組んでいる.どうやら,自分の子孫を残すために,関わっていない受精卵を食べてしまう成体がいるらしい.この結果についても,大会で報告する.


日本生態学会