| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-59  (Poster presentation)

植物食性昆虫の体内より得られた菌類による紙分解性について
Cellulose degradation by fungi obtained from phytophagous insects

*板垣都亜(福岡県立城南高等学校)
*Toa ITAGAKI(Jonan High School)

地球上に最も多く存在するバイオマス資源であるセルロースを有効活用することを目標に、植物食性昆虫のフンからセルロース分解菌の単離及び、菌のセルロース分解能力の検証を行った。まず、2種類の昆虫(ゴミムシダマシ(Setenis valgipes),コオロギ(Loxoblemmmus arietulus))のフンを回収して滅菌水で希釈し、希釈液をCMC培地に塗り広げ、その結果、合計6株(g2株,g3株,g6株,k2株,k3株,k4株)のセルロース分解菌を単離した。単離した6株のセルロース分解能力を簡易的に評価するため、CMC培地に酵素抽出液を滴下しハローを形成させ、その長径と短径の積を比べると、g3株のものが最も大きくなった。g6株とk2株はハローを形成しなかったことから、この2株はハローが生成されないほどごく微量のセルロースを分解している、あるいは、代謝基質をほとんど必要としないため、貧栄養培地でも生育できると考えられる。次に、セルロース分解能力の髙かった3株を用い、セルロースの結晶である紙への作用を調べた。パンチで切り抜いた紙を、菌の酵素によって分解させ、生成したグルコース濃度を測定した。その結果、g3株由来の酵素を用いた場合、グルコース濃度が最も高くなった。このことから、g3株のもつ酵素のセルロース分解能力が最も高いと考えられる。追加実験として、菌を生育させる培地に窒素栄養分を加えて反応させたところ、g2株とk4株においてはグルコース濃度が高くなったのに対して、g3株のグルコース濃度はほとんど変わらなかった。このことから、g3株は大気中の窒素を利用できる可能性がある。今後は、グルコース濃度をより高くするための条件や、生成されたグルコースの活用方法を探索していきたい。


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