| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S07-2  (Presentation in Symposium)

県スケールのSFTS感染予測 ~宮崎県における分析~
Prefecture-scale distribution-predictor of SFTS infection: spatial epidemiological determinants in a GWLR model in Miyazaki

*安尾和裕, 西浦博(北海道大学)
*Kazuhiro YASUO, Hiroshi NISHIURA(Hokkaido Univ.)

SFTSは主に屋外活動に伴うダニ媒介疾患である。疾患予防策として一般的なダニ刺傷予防策徹底が優先される。地点毎の発生リスクを評価することにより、感染予防策重点施行地区を絞り込むことが可能になる。リスク地図作成では、感染vector・hostの分布、ヒト感染推定地点の地理的情報を統合することで精度の向上が期待できる。現在vector・hostの生態上の分布は未解明であり、リスクマップ作製においてヒト推定感染地点の地理的情報が利用可能な唯一かつ正確な資料となる。SFTSに関連する情報は保健所単位での集計となっており、詳細な感染推定地点については一般公開されていない。感染推定地点の情報を公開している宮崎県のデータを利用して、我々はSFTS発生に関連する地理的要因を同定、2次メッシュ(10km×10km)での感染リスクを推定した。ある地点でイベントが発生した場合、近傍の地点では地理的に近接するほど疾患発生確率に影響を受けるという「正の空間的自己相関」を示すことを組み込んだ「地理的荷重線形回帰分析」(Geographically Weighted Logistic Regression:GWLR)を用いて解析を行った。我々のモデルではAUC 73.9% 、感度90.9%、特異度58.7%であった。高度はOdds ratio(OR) 0.996(95%CI:0.994-0.999)、経営耕地面積はOR 0.999(95%CI:0.998-1.000)を示した。高度が低いほど、農地面積が少ないほど、SFTSが発生しやすいことになる。宮崎県の地理的特性でこの条件を満たす場所は、山ぎわ・川沿いの狭隘な農地となる。本講演では、中国でのSFTS発生地点と発生に関与する要因の総括、GWLRの簡単な解説を行ったのち、県レベルで分析を行った我々の研究内容と背景について解説する。


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