| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S08-3  (Presentation in Symposium)

微気象過程を導入したサイズ構造モデル
A size-structured model incorporating micro-meteorological processes in a canopy

*戸田求(広島大学)
*Motomu TODA(Hiroshima University)

これまで、植生動態を考慮した大気ー生態系モデルによる炭素収支研究が数多く行われてきた。一般に、植生動態を表す際に用いられる代表的指数は植生葉量を反映する葉面積指数などである。一方で、より長期的時間スケールで評価・予測を行う上では樹木個体群動態モデルが重要な役割を果たす。その中で、サイズ構造モデルは個体ベースモデルに比べモデル構造が単純で計算コストが小さいなどの利点があり、今後の大気ー生態系モデル研究ではサイズ構造モデルのデータ同化研究への利用などが可能性として挙げられる。発表者は、本シンポジウムで以下の課題、「老齢林がなぜ高い炭素吸収量を生み出せるのか?」、を切り口として、サイズ構造モデルを考慮した大気ー植生動態モデル(MINoSGI)による数値実験研究事例を紹介する。ここで、老齢林とは林分優占種の樹齢が100年超の森林と定義する。過去の研究論文では、フラックスの長期計測や毎木調査データを利用した統合解析の結果、温帯域から北方域の老齢林は生態系レベルで高い生産量(GPP,NPP,NEP)を示すことが報告された。老齢林の高い生産量を生み出すメカニズムについては、森林構造の複雑性が光合成機能を高める要因との言及があり、葉群鉛直分布にみられる着葉の乱れと地上部NPP増の関連性を示した報告もみられる。一方で、老齢林の構造複雑性を生み出す本質的要因の解明には至っていない。シンポジウムでは、本課題を通してサイズ構造モデルの利用可能性について議論する。


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