| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S12  3月5日 17:00-20:00 Room H

移動パターンの種内多様性:意思決定メカニズムの解明に向けた実証×理論アプローチ
Polyphenism of migration: experimental and theoretical approach for comprehensive elucidation in mechanisms of decision-making

堀田淳之介(九州大学/ 首都大学東京), 佐藤拓哉(神戸大学大学)
Junnosuke HORITA(Kyushu University/ TMU), Takuya SATO(Kobe University)

生物の移動(渡り・回遊・季節移動)は適応戦略の一つであり、変化する季節や環境に対して、繁殖や成長および生存を最適化するためのものであると考えられている。しかし、移動のパターンはしばしば種内多型を伴い、移動しない個体と移動する個体が共存する場合もある。例えば、鳥類では長距離の渡りを行うものもいれば定住するものもいる。また、サケ科魚類では、海に降り大きく成長したのちに繁殖のために母川に回帰する降海型と、母川に留まって成熟する残留型が存在する。このような移動パターンの多様性は、個体が生活史のある時期に、自らの状態に依存して、複数の選択肢の中から一つを選択する「意思決定」の多様性の結果として生じる。意思決定はしばしば状態依存戦略という概念によって説明されるが、これは個体がある状態にあった時に、より良い適応度を実現するオプションを選択するという考え方である。個体の状態は生活史を通して、環境や成長、経験や学習等によって変化するが、変化し続ける状態のもとで、生物はいつ意思決定をしているのであろうか? また、状態といっても、季節的な応答や個体群内での順位制、あるいは内分泌系など、様々な階層での状態が考えられるが、これらはどのように関係しているのであろうか? 本シンポジウムでは生態・行動・生理の観点から移動パターンの種内多様性の実態と発現メカニズムについて、魚類・鳥類・哺乳類の研究事例を紹介する。種間の共通点・相違点を整理し、生物がなぜ移動するのか、その多様性がどのように維持されているのかについて考える。

[S12-1]
行動と内分泌間の正のフィードバックが代替生活史戦術の発現を引き起こす *堀田淳之介(九州大学, 首都大学東京), 巌佐庸(関西学院大学), 立木佑弥(首都大学東京)
Positive feedback between behavior and endocrine system causes the expression of Alternative life history tactics *Junnosuke HORITA(Kyushu University, TMU), Yoh IWASA(Kwansei Gakuin University), Yuuya TACHIKI(TMU)

[S12-2]
太平洋サケの同一種内に見られる降海型と河川残留型 *棟方有宗(宮城教育大学)
Migratory and resident forms within the same species *Arimune MUNAKATA(Miyagi University of Education)

[S12-3]
鳥類の渡りパターンの変異はどうして存在するのか?ー先行研究から見えることー *中原亨(北九州市博)
Variation in the migration pattern of birds: a review *Toru NAKAHARA(Kitakyushu Mus NatHist HumHist)

[S12-4]
遊動的な草食哺乳類モウコガゼルの種内多様性と移動要因解明に迫る複合的アプローチ *伊藤健彦(鳥取大学), 宮崎淳志(京都大学), 小山里奈(京都大学), 飯島慈裕(三重大学), 木下こづえ(京都大学), Lhagvasuren BADAMJAV(Mongolian Academy of Sciences)
Multiple approach to analyze intraspecific variability and migration factors in Mongolian gazelles *Takehiko ITO(Tottori University), Atsushi MIYAZAKI(Kyoto University), Lina KOYAMA(Kyoto University), Yoshihito IIJIMA(Mie University), Kodzue KINOSHITA(Kyoto University), Lhagvasuren BADAMJAV(Mongolian Academy of Sciences)


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