| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W04-2  (Workshop)

RTK-UAVを用いた崩壊地斜面における表層動態の観測
Monitoring of topography and vegetation using RTK-UAV in the landslide area caused by the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake

*中田康隆, 速水将人, 蓮井聡, 佐藤創(道総研・林業試)
*Yasutaka NAKATA, Masato HAYAMIZU, Satoshi HASUI, Hajime SATOH(HRO)

 北海道胆振東部地震に伴い大規模な斜面崩壊が稠密に発生し、早急な森林の再生が求められている。しかし、大規模に及ぶ崩壊地の森林再生手法に関する知見は不足している。崩壊地の斜面では、降雨や凍結・融解を介した土壌侵食が数十cmスケールの表層土壌を移動させる駆動力となり、植物の種子定着や実生の発芽・成長を妨げる。そのため、まずは植物の生育基盤となる崩壊地の表層動態を迅速かつ正確に把握する必要がある。表層動態を把握する手法の一つとして、小型UAV (Unmanned Aerial Vechicle)を用いたSfM多視点ステレオ写真測量(Structure-from-Motion Multi-View Stereo Photogrammetry)が近年注目されている。従来手法では、標定点が必要であった。しかし、このような崩壊地に標定点を設置することは、労力を要するだけでなく、危険を伴う作業となる。2018年11月に標定点を必要としない、もしくは、設置労力を大幅に削減することが可能とされるPhantom 4 RTK(Real-Time Kinematic)がDJI社から発売された。しかし、実際に災害現場で精度検証を実施した事例はまだ少ない。本発表では、崩壊地への適用に向けて検証を行った結果と表層動態の解析結果を報告する。2019年3月、厚真町高丘地区の崩壊斜面を対象に、RTK-UAVにより作成した数値表層モデルの精度検証を行った。また同年4月、精度検証を行った同じエリアを再測量し、3月に作成したモデルとの差分解析を行った 。その結果、正解データとモデルから推定されたデータとの誤差を示すRMSE(Root Mean Square Error)は水平・垂直方向で共に0.060 m ~0.064 mであることがわかった。また、植物の生育基盤としての表層土の動態や安定性をモニタリングする上で重要となる垂直方向の最大誤差は0.108mであった。差分解析の結果、-0.1 m以上+0.1 m未満変化した箇所が86.86 %と最も多かった。次に、-0.5 m以上から-0.1 m未満標高が変化した箇所が11.36 %と最も多かった。特に侵食域は、崩壊跡地の辺縁部で多く確認された。


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