| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W12-2  (Workshop)

インドネシア熱帯木材生産林におけるFSCのパイロット試験の結果
A pilot test of the FSC forest certification for ecosystem services in an Indonesian tropical production forest

*澤田佳美(京都大学)
*Yoshimi SAWADA(Kyoto Univ.)

生態系サービス認証のパイロット試験地の1つとして、東カリマンタンに位置するRatah社の熱帯林がある。Rata社では、2011年から低インパクト伐採を導入し、2013年にFSC森林認証を取得している。このパイロット試験では、炭素貯留と生物多様性保全(自然林の保全と種多様性の保全)とをターゲットとした生態系サービス認証の取得のための調査・評価が行われた。調査手法は、京都大学森林生態学研究室で開発した「可視化技術」を用いた。この手法は、現地調査で得たデータとLandsatの衛星画像とを組み合わせて解析するもので、炭素貯留量や森林の原生度(林冠木の種組成からみた原生林の種組成との類似性)を地図化するだけでなく、1ピクセルに推定値を外挿することで、景観レベルでの定量評価が可能である。このパイロット試験では、2010年と2015年の炭素貯留量(ton/ha)と森林の原生度とを比較検討した。その結果、炭素貯留量はほとんど減少しなかったことが示され、年間炭素排出量は0.6 ton/ha/yearと、東カリマンタンにおける伐採による炭素排出量(2001~2012年)60.2 ton/ha/yearと比較しても極めて少なかった。森林の原生度については、この5年間で大きな減少はみられなかった。さらに、このパイロット試験では、陸上動物を対象としてカメラセンサスも実施しており、多くの種の生息を確認することができた。これらの結果を受けて、Ratah社の森林管理は、木材生産をしながらも生態系サービスが維持されていると評価され、2018年1月に条件付きの生態系サービス認証を取得した。


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