| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W13-2  (Workshop)

巨大外来ナメクジ vs 市井の超人たち
Invasive giant slugs vs wonder citizens

*森井悠太(京都大学), 大久保祐作(北海道大学), 渡辺早苗(札幌市在住)
*Yuta MORII(Kyoto Univ.), Yusaku OHKUBO(Hokkaido Univ.), Sanae WATANABE(Sapporo City)

アマチュア科学者によって行われる科学活動は市民科学と呼ばれ、近年その可能性が注目されつつある。市民科学は広範囲や長期間に渡る観察やモニタリングに大きな力を発揮することが知られており、特に生態学や天文学の分野において様々なプロジェクトが世界中で展開されている。外来種問題は中でも、市民科学の本領が最も発揮されるトピックのひとつと言える。私が現在携わっているマダラコウラナメクジの市民科学のプロジェクトも、市民の観察から始まった。私自身が最初に北海道札幌市の円山で、体長15 cmにもなる北欧原産の豹柄の外来ナメクジ、マダラコウラナメクジを発見したのが2014年7月であったのに対し、円山近隣の住民はその二年も前から新たな外来ナメクジの侵入に気づいていた。そのことを個人のブログに載せていた市民の方々とコンタクトを取り、後に「外来ナメクジに挑む市民と学者の会」と名付けた市民参加型プロジェクトのチームを結成したのが本研究の発端である。それ以降、現在に至るまでに本会が上げた成果は、学術論文や解説文4本、国内外における学会発表4件、一般向けの観察会や講演会8件、その他市民が主体となったナメクジの駆除活動、数々のメディアへの露出など、多岐に渡る。そのどれもが、市民による地道な観察や活動が基となっており、市民の潜在能力の高さを如実に示すものと考えている。本発表では、市民の力がプロの研究者を心の底から驚かせ、基礎科学を推し進める原動力となり得ることを私の体験した実例から示したい。


日本生態学会