| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W17-2  (Workshop)

LANDIS-IIってなに?
What is LANDIS-II?

*芳賀智宏(大阪大学)
*Chihiro HAGA(Osaka University)

LANDIS-II (LANdscape DIsturbance and Succession, http://www.landis-ii.org/) は,北米大陸を中心に流域~州といった比較的広域 (数百~数百万ha) を対象に,生態系機能・生態系サービスのシナリオ分析で応用されている森林景観モデルである.広域で撹乱や種子散布の影響を空間明示的にシミュレーションできる点が特徴だ.現在は森林管理・風倒・病虫害・山火事・土地利用変化といった撹乱プロセスがモデルに実装されており,新たな撹乱プロセスの実装や物質循環プロセスの改良も盛んである.
広い空間スケールでのモデルの運用を実現するため,LANDIS-IIでは景観を数十〜数百m解像度のグリッドで表現するとともに植物生理学的プロセスを簡略化している.グリッド別に現実の植生状態を樹種・樹齢別のコホートにまとめ,コホートの成長・競争や物質循環を月〜年タイムステップ別に計算することで計算負荷を軽減している.これらのプロセスは光・温度・土壌中の利用可能な水分や窒素量に応じて計算される.撹乱の空間分布や強度はこうして計算されたグリッド・コホート別の樹齢やバイオマスなどの状態量に応答する.
LANDIS-IIを運用するためには,1)研究目的に合致した機能があるかを精査し必要に応じて改良・運用を工夫し,2)計算開始時点の対象空間のコホートの空間分布を設定し,2)モデルのパラメータを収集・調整することが求められる.LANDIS-IIもiLandと同様に欧米外での適用事例が少なく,日本国内の森林で運用するには上記の3段階をローカライズする必要がある.これらのハードルを下げ,国内での森林景観モデル研究のネットワークを構築する一助とするため,モデルの概要とともに北海道別寒牛川流域や渡島檜山地域でのLANDIS-IIの応用事例を紹介する.また,地域循環共生圏や地域内エコシステムなど今後森林への駆動因が変化する状況下での森林景観モデルの役割を考察する.


日本生態学会