| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W18-4  (Workshop)

白山サイトにおける地表徘徊性甲虫類調査から見えてきたこと
The findings from the ground beetle investigation on the Mt. Hakusan site

*平松新一(白山自然保護センター), 野上達也(石川県庁)
*Shinichi HIRAMATSU(HNCC), Tatsuya NOGAMI(Ishikawa Prefecture)

高山地域の環境は低温、多雪、強風など低地と比べて非常に厳しい。そのような環境に生息する生物は、低地とは異なった特徴を有しているとともに、環境変化に鋭敏で現在進行しつつある温暖化に対して低地よりも早く反応する可能性がある。地表徘徊性甲虫類は環境指標としても有効な生物群であると言われているが、モニタリングサイト1000高山帯調査で地表徘徊性甲虫類の調査を行っているのは白山サイトが唯一である。そこで、本調査が始まった2009年からこれまでの結果をもとに、白山高山地域における地表徘徊性甲虫類の特徴と変化について検討した。
これまでの結果から、白山高山地域における地表徘徊性甲虫類は、独特で貧弱な種類相、極端な個体数の増減、強い生息地選択性、小型種及び短翅・無翅種の優占などの特徴を有していることが明らかになった。特に、白山高山地域の地表徘徊性甲虫相は低地とは大きく異なっている一方、チビマルクビゴミムシNippononebria pusilla、ヤノナガゴミムシPterostichus janoiなど、白山と離れた高山地域との共通種が確認された。また、雪田、ハイマツ低木林、風衝地など、環境ごとに異なった種が出現しており、ヤノナガゴミムシはハイマツ林内で最優占種であるが、雪田、風衝地ではほとんど記録されず、雪田、風衝地で最優占種であるミズギワゴミムシ属の一種Bembidion sp.は、ハイマツ林では全く記録されなかった。
これまでの結果からは顕著な経年変化傾向は認められなかった。ただし、今後の少雪化により雪田が乾燥すれば、雪田ではBembidion sp.などの減少やP. janoiの侵入が懸念される。また、温暖化に伴ってより低い地域に生息する種が高山地域に侵入してくる可能性もある。そのような変化を注視しつつ今後も継続的な調査を行っていく必要がある。


日本生態学会