| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-01  (Oral presentation)

蘚苔類の種数の標高に伴う変化:維管束植物との比較
Altitudinal changes in bryophyte species richness: Comparison with vascular plants

*夫婦石千尋(九州大学), 秋山弘之(人と自然の博物館), 永濱藍(九州大学), 矢原徹一(QOU)
*Chihiro MYOTOISHI(Kyushu Univ.), HIROYUKI AKIYAMA(HYO), AI NAGAHAMA(Kyushu Univ.), TETSUKAZU YAHARA(QOU)

蘚苔類の種数にどのような環境要因が影響を及ぼしているのかを調べるために、福岡県糸島市井原山の10地点(標高268 ~869 m)において分布調査を行った。各地点に5つのコドラート(2 m×2 m、10 m間隔)を設置し、各コドラートにおいて蘚苔類・維管束植物の種を識別して有無を記録した。蘚苔類については種ごとに生育基質を記録した。コドラートの写真から、コドラート内の岩の面積比、水面の面積比、コケが着生した生木の本数(以後生木の本数と表記)、岩の高さを求めた。これら3要因と、維管束植物の種数・各地点の標高を説明変数とし、各コドラートで記録された蘚苔類の種数を目的変数として重回帰分析を行ったところ、種数と環境要因の間に有意な関係は見られなかった。次に、記録された種の生育基質を土・生木・朽ち木・岩・葉の5カテゴリーに分け、5つの生育基質に着生した種(土選好種、生木選好種、朽ち木選好種、岩選好種、葉選好種)の数を目的変数に、水面の面積比・岩の面積比・生木の本数・岩の高さを説明変数として重回帰分析を行った。その結果、以下の関係が有意だった。(1)土選好種は岩の面積比が大きいほど多い。(2)岩選好種は岩の面積比が大きいほど多く、生木の本数が少ないほど多い。(3) 葉選好種は水面の面積比が大きいほど多い。(4)朽ち木選好種の数はどの環境要因とも有意な関係が見られなかった。結論として、蘚苔類の種多様性には、岩の面積比・生木の本数・水面の面積比が影響しているが、その影響は種の基質選好性によって正の場合と負の場合があるため、基質選好性を区別した分析が重要である。


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