| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-11  (Oral presentation)

植物は日陰をどう区別しているか 【B】
How plants distinguish shade 【B】

*久米篤(九州大学)
*Atsushi KUME(Kyushu Univ.)

地球の光環境は、入射日射と大気との相互作用によって様々な波長成分の光から構成されている。植物はそれに応じて、フィトクロム、フォトトロピン、クリプトクロム、UVR8(UV RESISTANCE LOCUS 8)などのさまざまな光受容体を使用して、成長プロセスを調節している。センシングに使用される主な波長帯域は、UV-B(UV)、UV-A /青(B)、赤(R)、および遠赤(FR)波長の光で、ほとんどの場合、同じ波長帯域内に複数の光受容体がある。その理由を明らかにするために地上の直達・散乱日射や森林林冠下のスペクトルデータを解析し、環境情報取得の観点から光受容体に必要な吸収波長帯を検証した。その結果、B光は晴天日の散乱放射や日陰環境、R光強度は直達日射に対応しており、正確な陸上の光合成有効放射強度のセンシングにはB光とR光の受容体が不可欠であった。B光とR光を同時に測定することで、植物は自分がどれだけ物によって遮蔽された環境にいるかを判断することが可能となり、R光とFR光を同時に測定することで、他の植物の葉に覆われている程度を正確に評価することが可能となる。B光とR光に対する気孔の光応答、R光とFR光に対する成長や発芽の光応答は、実際の野外の光特性とよく対応している。一方、UVは拡散成分が卓越しており、異なった応答反応が生じると考えられた。陸上植物の光受容体を進化させた主要な環境要因は、大気分子、オゾン層、大気水蒸気、植物の相互被陰であり、晴天日の光環境の多様化が重要であると結論した。


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