| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-06  (Oral presentation)

モンゴル草原植物群集における遺伝的多様性の植物種間比較 【B】
Inter-species comparison of genetic diversity across the Mongolian grassland communities 【B】

*石井直浩(横浜国立大学), 高橋昌也(東北大学), 吉原佑(三重大学), Nyambayar DASHZEVEG(National Univ. of Mongolia), Tserendejid AYUSH(National Univ. of Mongolia), 陶山佳久(東北大学), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Naohiro ISHII(Yokohama National Univ.), Masaya TAKAHASHI(Tohoku Univ.), Yu YOSHIHARA(Mie Univ.), Nyambayar DASHZEVEG(National Univ. of Mongolia), Tserendejid AYUSH(National Univ. of Mongolia), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

 遺伝的多様性は生物多様性の基盤となる要素のひとつであり、環境変動に対する適応能力や個体群の時間的な安定性に寄与する。このような知見は、ある種における複数個体群間の遺伝的多様性の比較から得られた結果である。よって、種間比較、特に、局所的な群集での優占種間の比較において、種ごとの遺伝的多様性のレベルが個体群の安定性の程度に寄与するかどうかについては明らかになっていない。また、これまでの研究から、遺伝的多様性から予測される有効集団サイズは、観察された個体数などといった見かけの集団サイズとは必ずしも正の相関を示さないことが明らかになっている。見かけの集団サイズが遺伝的多様性の代替指標となり得るかどうかを明らかにすることは、生態系管理に対する有用な情報の提供に繋がる。本研究では、モンゴルの乾燥地草原生態系に100×100mの調査区を設定し、9種の優占植物について、ゲノムワイドな遺伝的多様性(塩基多様度、ヘテロ接合度)、見かけの集団サイズ、4年間にわたる集団サイズの安定性の関係を調査した。その結果、同所的に生育する複数植物の遺伝的多様性のレベルは、見かけの集団サイズやその安定性の差異とは有意な相関を示さなかった。これは、調査区内のニッチとなる面積や干ばつ耐性などといった種ごとの特性が、局所的なスケールでの個体群の安定性と関連することに起因していると考えられる。このことから、遺伝的多様性は、より長期的な個体群の安定性をもたらす、もしくは、極端な環境変化に対する回復力・抵抗力に寄与する可能性がある。本研究の結果から、異なる空間・時間スケールでの遺伝的多様性と集団サイズやその安定性との関係を調査することで、乾燥地生態系の持続的な維持に関する理解をより深めることができると示唆された。


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