| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-10  (Oral presentation)

羽化殻を利用した琵琶湖における大型トンボ類の分布
Distribution of large dragonfly species in Lake Biwa using exuviaes

*奥田達也(滋賀大学)
*Tatsuya OKUDA(Shiga Univ.)

 琵琶湖には、全国に生息するトンボの約1/4の種が生息している。また,オオサカサナエStylurus annulatusなど、国内では分布が限られているトンボも確認されている(吉田ら,2018)。このことから、琵琶湖は国内におけるトンボ類の重要な生息場所と考えられる。しかし、琵琶湖における定量的なトンボ類の分布調査は、1960年代の羽化殻を用いた調査(六山ら,1966)以降、半世紀以上行われていない。そのため、琵琶湖におけるトンボ類の分布変化については不明な点が多い。そこで、本研究では琵琶湖湖岸において羽化殻を用いた定量的な調査を行い、トンボ類の分布と生息環境を明らかにすることを目的とした。
 羽化殻の採集は、2018年に琵琶湖南湖(以下、南湖)の湖岸10地点、2020年に琵琶湖北湖(以下、北湖)の湖岸33地点で行った。さらに、調査距離あたりの定量的な羽化殻数を算出した。
 調査の結果、南湖では6科8種326個体の羽化殻が得られた。この内、ウチワヤンマSinictinogomphus clavatusが約54%を占めた。1960年代の調査では、南湖の優占種がオオヤマトンボEpophthalmia elegansであった(六山ら,1966)が、半世紀の間にウチワヤンマに優占種が変化していたことが示された。
 一方、北湖では4科8種558個体の羽化殻が得られた。この内、メガネサナエStylurus oculatusが約37%、オオサカサナエが約19%を占めていた。この2種は、1960年代の調査では北湖西岸で羽化殻がほとんど見られなかった(六山ら,1966)。しかし、本調査で最も羽化殻の密度が高かった地点は北湖西岸の真野浜であった。
 これらのことから、琵琶湖の湖岸において半世紀の間に優占種の変化や多産地の変化が生じていることが示された。今後は各種の分布と環境要因の関係について議論を行いたい。


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