| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-08  (Oral presentation)

潜葉性害虫ヤノナミガタチビタマムシの発生とケヤキ早期落葉時期の関係について
Relationship between the timing of early leaf abscission and the emergence of a leaf mining beetle

*大澤正嗣(山梨県森林総合研究所)
*Masashi OHSAWA(Yamanashi For. Res. Inst.)

ヤノナミガタチビタマムシの潜葉を受けるとケヤキの葉は早期落葉する。潜葉性害虫への早期落葉の影響については、これまで多くの研究がなされてきた。ある研究者は,潜葉性害虫の入った葉を木が落葉させることでその害虫の死亡率が高まることから、早期落葉は害虫の個体数の減少に貢献していると考えた(例えばOwen 1978)。一方、別の研究者らは,早期落葉時期には幼虫は既に摂食を終えており、早期落葉による害虫の死亡率が低いことから、早期落葉は害虫の個体数の増減に影響しないとした(例えばPritchard and James 1984)。そこで、今回、ケヤキ早期落葉の時期やその時の気象条件と、落葉内部のヤノナミガタチビタマムシの生死との関係について調査を行った。早期落葉の内、初期の落葉については、この落葉内に潜葉している幼虫のサイズが小さく、落葉からの成虫の発生率は低かった。一方、早期落葉内にヤノナミガタチビタマムシがいる時期に雨が多く、葉の湿度が高い状態が保たれると、中で本虫が死亡し成虫の発生率が低下した。初期の早期落葉や多雨下での早期落葉が本昆虫の個体数を減少させており、早期落葉現象は条件付きではあるが、潜葉性害虫ヤノナミガタチビタマムシの個体数の減少に貢献していると考えられた。


日本生態学会