| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-09  (Oral presentation)

ヤドリギ果実を摂食するヒヨドリ個体数のレンジャク飛来の有無による変化
Changes in the populations of Hypsipetes amaurotis feeding on mistletoe (Viscum album) fruit depending on whether or not Waxwings flying in.

*緒方健浩(近大院農), 澤畠拓夫(近大農)
*Takehiro OGATA(Kindai Univ.), Takuo SAWAHATA(KINDAI Univ.)

 ヤドリギ類は他の樹木の地上部に寄生する木本植物の総称であり、養水分を宿主に依存する半寄生植物である。ヤドリギ類の分布は局所的になることが知られ、これまで地形や林分構造、宿主の個体サイズなどが要因として報告されてきた。しかし、ほとんどの種が種子散布を鳥類に依存しているにもかかわらず、国内での種子散布を行う鳥類に関する知見は限られているのが現状であり、全国的に広く分布するヤドリギ Viscum album subsp. coloratum においても採食が確認された鳥類の記録があるのみとなっている。また、ヤドリギの主要な種子散布者と期待されるレンジャク類は渡来数の年変動が激しく、年によってはレンジャク類が存在しない地域が生じるが、そのような地域における主要な種子散布者についても詳細な知見はない。そこで本研究ではレンジャク類の渡来がヤドリギの種子散布を行う鳥類に及ぼす影響について明らかにすることを目的に、ヤドリギの種子散布を行う鳥類について調査を行った。

 調査はヤドリギが多数分布する奈良公園周辺地域において行った。レンジャク類が渡来しなかった2019年に1地点、渡来が見られた2020年に2地点でヤドリギの宿主木を訪問する鳥類の観察を行った。観察は鳥類の活動が活発である日の出から5時間の間に行い、2019年は1-3月、2020年は1-4月の間に実施し、採食を行った鳥類の種類と個体数を記録した。また、本調査でヤドリギ果実の採食が観察されたのはヒヨドリ Hypsipetes amaurotis とレンジャク類のみであったため、ヒヨドリとレンジャク類に注目した。これらの調査結果から、レンジャク類の渡来がヤドリギを採食するヒヨドリに与える影響について報告する。


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