| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-08  (Oral presentation)

対照的な遊泳モードを持つ水鳥の潜水時間のスケーリング
Scaling of dive duration among water birds with contrasted swimming modes

*松下浩也(総合研究大学院大学), 渡辺佑基(総合研究大学院大学, 国立極地研究所)
*Hiroya MATSUSHITA(SOKENDAI), Yuuki WATANABE(SOKENDAI, NiPR)

水鳥は息を止めて潜るため、潜水時間には限りがある。潜水時間をできるだけ伸ばすためには、体内に蓄えられた酸素を効率よく使わなくてはならない。水鳥は翼で羽ばたくか足で漕いて泳ぐ。前者は後者よりも酸素消費速度が低いため、前者を使う水鳥の方が長く潜れると予想される。しかし、泳ぎ方の違う水鳥の間で潜水時間を比較した研究は未だに行われていない。本研究では、羽ばたいて泳ぐ水鳥は足を漕いで泳ぐ水鳥よりも長く潜ることができるという仮説を立てた。この仮説に基づいて、25 種の羽ばたいて泳ぐ水鳥と35種の足を漕いで泳ぐ水鳥の最大潜水時間と体重を文献から調べ、系統情報を考慮した回帰分析を行った。また、23種の羽ばたいて泳ぐ水鳥と30種の足を漕いで泳ぐ水鳥を対象に、理論的潜水時間を計算した。
その結果、羽ばたいて泳ぐ水鳥の最大潜水時間は足を漕いで泳ぐ水鳥より長くなるが、足を漕いで泳ぐ水鳥の最大潜水時間の回帰直線の傾き (= 0.64) は羽ばたいて泳ぐ水鳥の傾き (= 0.51) より急になった。同様に、羽ばたいて泳ぐ水鳥の体重当たりのADLは足を漕いで泳ぐ水鳥よりも長くなった。また、足を漕いで泳ぐ水鳥の平均潜水時間は羽ばたいて泳ぐ水鳥に比べてADLに達する、もしくはADLを超える傾向があった。
これらの結果は仮説を支持しており、羽ばたいて泳ぐ水鳥は足を漕いで泳ぐ水鳥よりも長く潜水することが示唆された。また、多くの足を漕いで泳ぐ水鳥は理論的潜水時間が短いにもかかわらず、それを超える潜水を行っていることが明らかになった。これは、足を漕いで潜る水鳥が底生生物を採餌することを強く反映しており、採餌する時間を最大化するためにADLに達する、もしくはADLを超える潜水行うことを示唆している。


日本生態学会