| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-02  (Oral presentation)

夜鴨の素顔:カモ類等によるレンコン食害の実態 【B】
Ducks at night: revealing waterfowl damage to lotus roots 【B】

*益子美由希, 山口恭弘, 吉田保志子(農研機構)
*Miyuki MASHIKO, Yasuhiro YAMAGUCHI, Hoshiko YOSHIDA(NARO)

カモ類による農作物被害金額は、鳥類では3番目に多い年間約4.5億円の被害金額(2019年度)が報告されており、対策手法の確立が課題となっている。一方で、カモ類は日中よりも夜間に活発に活動することから直接観察が難しいため、農作物への食害の様子は十分にわかっておらず、バン類による食害がカモ類と混同されている可能性もあるなど、実態の解明が求められている。
霞ヶ浦周辺に国内最大の約1,600haのハス田が広がる茨城県では、カモ類では年間約2億円、バン類では約1億円(2019年度)のレンコン被害が報告されている。ハス田は通年湛水され、レンコンの収穫は8月頃から始まり、12月をピークに翌年3月頃にかけて徐々に進んでいく。水面下約30〜80cmの泥深くから収穫する際、これら鳥類によると考えられる食べ跡のあるレンコンが得られることがあるが、どの鳥がどのようにして泥の中にあるレンコンを食べるかは明らかになっていない。そこで本研究では、レンコン食害の実態を把握することを目的に、夜間のハス田で採食するカモ類及びバン類を対象に、高精度カメラ(Sony α7ⅲ)を用いて動画撮影し、色補正による映像処理を行って採食行動を分析した。
越冬カモ類が多く見られる2020年11月から2021年2月、日没から未明にかけて、収穫前又は収穫後のハス田において、オカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、マガモ、カルガモ、ハシビロガモ、オナガガモ、コガモ、ホシハジロ及びオオバンの採食行動の動画が得られた。収穫前のハス田の特定の場所で潜水又は逆立ちを繰り返し、泥の中のレンコンを食べている可能性が考えられた個体が見られた一方、収穫後のハス田の水面に浮いた残さレンコンや水草等を食べ、商品価値のあるレンコンは食べていない個体も見られた。発表では、収穫前後のハス田での種ごとの採食行動について、サンプル映像を交えて紹介する。


日本生態学会