| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-09  (Oral presentation)

砂浜生態系における海起源と陸起源有機物の相対的重要性:3種安定同位体比による解析
Relative importance of oceanic and terrestrial matter inputs into sandy beach ecosystems revealed by a triple stable isotope approach

*塩澤直人(東北大学・院・生命), 柚原剛(東北大学・院・生命), 由水千景(総合地球環境学研究所), 陀安一郎(総合地球環境学研究所), 占部城太郎(東北大学・院・生命)
*Naoto SHIOZAWA(Tohoku Univ. Life Sci.), Takeshi YUHARA(Tohoku Univ. Life Sci.), Chikage YOSHMIZU(Res. Inst. Humanity and Nature), Ichiro TAYASU(Res. Inst. Humanity and Nature), Jotaro URABE(Tohoku Univ. Life Sci.)

 海洋と陸域の間に存在する砂浜海岸には、海藻や海洋生物遺骸などの有機物が漂着供給され、一方、陸からは海浜植物群落や沿岸林から有機物がもたらされる。したがって、砂浜海岸に生息するスナガニ類やハマトビムシ科などの甲殻類や甲虫目やハサミムシ目などの昆虫類は、海起源有機物と陸起源有機物の双方を直接あるいは間接的に餌資源として利用していると考えられる。しかし、砂浜生態系における動物群集やその空間構造に対する各有機物への貢献度は良くわかっていない。そこで、砂浜海岸に生息する甲殻類や昆虫類などの小動物を採集し、その炭素・窒素・硫黄の安定同位体比を調べることで、砂浜生態系の栄養基盤としての海起源有機物と陸起源有機物の相対的重要性やその空間構造への影響を明らかにすることを目的に本研究を行った。
 調査は、2019年9月に仙台湾の荒浜海岸と閖上海岸で行った。海岸に生息する小動物は、いずれの地点でも汀線から陸に向かってトランセクトを曳き、その線上の複数の地点にベイトを入れたピットホールトラップを1昼夜設置することで採集した。なお、ピットフォールに入れたベイトは1 mmメッシュで覆い、採集個体が接触出来ないようにした。採集した個体は、まず、炭素(13C)・窒素(15N)・硫黄(34S)の安定同位体比を分析した。合わせて、調査地で採集した漂着海藻や海浜植物、後背地に生息している内陸植物についても安定同位体比分析を行った。次いで、砂浜動物に対する栄養源として、漂着物(海藻)、砂浜内で採集された陸上植物(海浜植物)、防潮堤外で採集された陸上植物(内陸植物)を仮定し、それらの貢献度をベイズ統計による同位体混合モデルMixSIARにより推定した。
 これらの結果から、砂浜生態系を支える海起源・陸起源有機物の役割について考察する。


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