| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-002  (Poster presentation)

高知県室戸市佐喜浜町におけるニホンザルの環境利用と採食物
Habitat use and foods of Japanese monkey in Sakihama, Muroto City, Kochi Prefecture.

*寺山佳奈, 加藤元海(高知大学・院・黒潮圏)
*Kana TERAYAMA, Motomi GENKAI-KATO(Kochi University)

ニホンザルによる農作物被害は高知県を含め全国で深刻な問題となっており、農地を利用するニホンザルの生態学的な情報は農作物被害の対策を講じるうえでも重要な情報となる。高知県室戸市佐喜浜町におけるニホンザルの行動圏と利用食物との関係を明らかにすることを目的とした。調査地内で捕獲されたメスの成獣1頭に発信機を装着し、2018年9月から2019年8月の12か月間、各月1日以上、日の出から日の入りまで1時間間隔でニホンザルの位置情報を求め、最外郭法を用いて対象群の行動圏を推定した。調査地内に生息するニホンザルの採食物を調べるために、調査中に確認されたニホンザルの採食物を記録するとともに、調査地で捕殺された11個体の胃内容物を調べた。年間行動圏は10.2 km2であり、各月のニホンザルの利用場所は異なっていた。行動圏が大きくなる秋期には調査地の森林を多く利用し、行動圏の小さくなる夏期や冬期には調査地内の農地を含む集落周辺を多く利用していた。観察された採食物と胃内容物の結果から、秋期や春期は森林内に広く分布するハゼノキやヤマモモなどの果実を採食し、冬期や夏期は集落周辺に集中的に分布する柑橘やイネなどの農作物を採食することが示された。本調査地に生息するニホンザルは餌資源の分布に影響を受けて、分散的に餌資源が分布する秋期や春期には行動圏を大きくし、餌資源が農地周辺に集中的に分布する冬期や夏期には行動圏を小さくすることが示唆された。


日本生態学会