| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-003  (Poster presentation)

ハプロタイプごとに異なるアルゼンチンアリの採餌行動
Different foraging behavior among Japanese Argentine ant haplotypes

*瀬古祐吾(近大院・農), 一山智也((株)オリコン), 早坂大亮(近大院・農), 澤畠拓夫(近大院・農)
*Yugo SEKO(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), Tomoya ICHIYAMA(Oriental Consultants Co, Ltd), Daisuke HAYASAKA(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), Takuo SAWAHATA(Grad Sch Agric, KINDAI Univ)

アリ類をはじめとする社会性昆虫において,効率的な集団採餌は環境に適応する上で非常に重要な要素であり,その能力や戦略は種(遺伝的な差異)によっても大きく異なる.アルゼンチンアリLinepithema humile は特定のハプロタイプを共有するコロニー同士が協力し,大規模コロニー(スーパーコロニー)を形成する.一方で,ハプロタイプが異なるコロニー同士は敵対し,互いに異なるスーパーコロニーを形成する.また,本種はハプロタイプごとに生態学的(攻撃性,資源の利用幅)および生理学的(殺虫剤への耐性)特徴が大きく異なることが知られている.このことを加味すると,アルゼンチンアリの採餌行動においても種内変異が生じる,すなわちハプロタイプごとに採餌行動が異なることが予想される.そこで本研究では,日本に侵入したアルゼンチンアリの複数ハプロタイプ(LH1, LH2, LH3, LH4)を対象に,採餌行動を比較した.兵庫県神戸市から各ハプロタイプを有するコロニーを採集し,実験室内に持ち帰ったのち,5つのサブコロニー(女王1-2個体・ワーカー200個体・ブルード)を作成した.サブコロニーの巣となるコンテナと採餌アリーナを接続し,アリーナの中央に砂糖水を設置した.その後1時間,砂糖水に集まったワーカー個体数およびその到達時間を計測した.同時に,砂糖水の減少量を計測した.その結果,LH3のみが他のハプロタイプに比べ,明らかに餌への到達時間が長くなる,すなわち餌獲得が遅いということが判明した.一方で,LH3は獲得した餌重量がもっとも多い傾向にあった.これらの結果から,アルゼンチンアリ種内でもLH3は,他のハプロタイプとは異なる採餌行動をおこなう可能性が示唆された.


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