| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-013  (Poster presentation)

絶対単為生殖型ミジンコ個体群はクローン個体の集団なのか?
Is a population of obligate parthenogenetic Daphnia pulex composed of the clonal individuals?

*丸岡奈津美, 八巻健有, 占部城太郎(東北大院・生命)
*Natsumi MARUOKA, Kenyu YAMAKI, Jotaro URABE(Tohoku Univ.)

日本の平地湖沼に生息するDaphnia pulex (和名:ミジンコ) は日本列島に広く分布しているが、北米からの侵入種であり、有性生殖をしない絶対単為生殖型であることがわかっている (So et al. 2015)。日本には4つの遺伝系統 (JPN1-JPN4) が侵入しており、多くの場合、1湖沼につき1系統が分布している。しかし、1湖沼に複数の系統が分布している湖沼も稀ではなく、例えば、山形県畑谷大沼ではD. pulexの2系統 (JPN1, JPN2) が同所的に採集されている。両者は同種であり、餌は共通しているため野外では餌をめぐる強い競争関係にあると推定される。それにも関わらず、両者が同所的に生息できる理由は明らかでない。
これまで発表者は、畑谷大沼での10年間 (2009-2018年) に渡る野外採集と、室内での飼育実験により両者の休眠卵生産タイミングの違いが共存を可能にしているのではないかとの示唆を得た。つまり、餌をめぐる競争に劣位な系統は、すばやく休眠卵を生産し始めることで競争を避け、個体群の絶滅を回避していると考えられる。しかしながら、野外湖沼において、D. pulexの外部湖沼からの移入が起こっていないことは否定できない。そこで本研究では、畑谷大沼に生息する競争に劣位なD. pulex系統は、外部からの移入ではなく、休眠卵からの孵化によって個体群を維持しているとの仮説を立て、過去に畑谷大沼において採集された個体の配列情報を解読することにより、検証した。本発表では、これら結果を踏まえ、野外湖沼でのD. pulex種内共存における休眠卵の重要性を考察する。


日本生態学会