| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-016  (Poster presentation)

山口県西部におけるイノシシ(Sus scrofa)の栄養状態について
About the nutritional status of wild boars (Sus scrofa) in western Yamaguchi Prefecture.

*徳永萌(山口大学), 大森鑑能(鳥取大学), 細井栄嗣(山口大学)
*Moe TOKUNAGA(yamaguchi Univ.), Akitaka OMORI(tottori Univ.), Eiji HOSOI(yamaguchi Univ.)

イノシシは, 農林業被害をもたらす野生鳥獣の1つである. 山口県では, 野生鳥獣がもたらす農林業被害の4割強がイノシシによるものである. 被害防除対策としては, 効果的な捕獲と並行して, 耕作地での防護柵の設置や集落での誘因物の除去等に総合的に取り組むことが重要である. しかし, イノシシは生態学的な知見が少ないため, 適正な管理を推進するためには, 栄養状態を把握することが重要である. そこで本研究では, 山口県西部の常緑樹林帯に生息するイノシシにおける栄養状態の指標となる脂肪蓄積の様式と季節変化を明らかにすることを目的とした.
山口県下関市で捕獲された99頭のイノシシ(オス44頭 メス54頭)の腎臓重量と腎周囲脂肪指重量及び皮下脂肪を測定し, 大腿骨を収集した. 皮下脂肪は, 養豚現場で一般的に栄養状態の指標として用いられるP2点での背脂肪厚を測定した. また, 腎臓重量と腎周囲脂肪重量から腎周囲脂肪指数(RKFI)を算出し, 収集した大腿骨は, 大腿骨骨髄内脂肪指数(FMFI)を乾燥重量法により測定した.
山口県下関市で捕獲されたイノシシの皮下脂肪とRKFIでは同じような季節変化が見られ, 晩秋から冬にかけて高く推移していることが分かった. 一方FMFIは個体の年齢による違いが見られた. また背脂肪厚とRKFIの間には正の相関が見られた. しかしRKFIとFMFIの間には一定の傾向は見られなかった.
山口県下関市に生息するイノシシの脂肪蓄積の様式及び季節変化は食性と年齢が影響していると考えられる.


日本生態学会