| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-017  (Poster presentation)

環境DNA分析によるオオダイガハラサンショウウオの分布予測
Predicting distribution of Odaigahara salamander with eDNA analysis

*竹下大輝(神戸大・院・発達), 西澤崚平(神戸大・院・発達), 佐藤拓哉(神戸大・院・理), 源利文(神戸大・院・発達)
*Daiki TAKESHITA(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Ryohei NISHIZAWA(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U), Takuya SATO(Grad Sc Science, Kobe U), Toshifumi MINAMOTO(Grad Sc Human Dev Env, Kobe U)

絶滅危惧種の保全には分布状況の把握が必要不可欠である。しかし、種によっては詳細な分布域が不明なものも存在する。本研究で対象としたオオダイガハラサンショウウオ(Hynobius boulengeri)の場合、紀伊半島での断片的な目撃例はあるものの、効果的な保全には、より高密度な分布情報が求められる。また本種は地図に載っていないような細流にも生息し、1つ1つ探して回るには大きな労力が伴う。そこで本研究は簡便かつ広範な調査が展開できる環境DNA分析を適用し、分布調査における手法の実用性検証と、分布予測を行った。まず、オオダイガハラサンショウウオに種特異的なプライマーと蛍光プローブを設計し、特異性を確認した。次に京都大学和歌山研究林で水サンプルを採取し、環境DNAを分析した。結果、採水した32地点の内、個体の目撃情報がある地点を含む8地点で環境DNAが検出された。進入困難な細流においても検出データが得られ、環境DNA分析がオオダイガハラサンショウウオの分布調査に有用であると示された。また、結果に対する説明変数として調査地点の水質や環境データを含めてGLMをフィッティングさせた結果、AIC最小のベストモデルとΔAIC<2のモデルの多くは「年平均気温(℃)」を含んでいた。冷涼な気候を好む本種において、気温は重要なパラメーターであり、環境DNA分析の結果は生態とよく一致していたと言える。また、GLMから得られた回帰式に紀伊半島各地の環境変数を代入する事で環境DNA検出の予測地図を作成した。これにより、調査地点選定の際に活用できる基礎情報が得られた。今後、調査地点を増やす事で予測の確認と精度の向上が行われる事が期待される。


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