| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-022  (Poster presentation)

中型食肉目の時間的ニッチ分割研究における共起パターン解析の適用
Application of co-occurrence analysis to the study of temporal partitioning of medium-sized carnivores

*渡部凌我(山形大学), 角田裕志(埼玉環境科学セ), 斎藤昌幸(山形大学)
*Ryoga WATABE(Yamagata Univ.), Hiroshi TSUNODA(CESS), Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

 食肉目動物は競争を避けて共存するためニッチを分割することが知られる。時間的なニッチ分割は種の共存にとって最も重要な戦略の1つとされ、日周活動の重複度の違いによって評価されている例が多い。近年、出現時間差に着目した評価なども行われているが、時間の扱い方が異なる解析手法の比較評価は十分に行われていない。本研究では、アカギツネ・タヌキ・ニホンテンの3種を対象とし、時間的ニッチ分割を評価する複数の解析手法を比較した。
 調査は山形大学演習林周辺で行った。2019年及び2020年の5月から10月に林道沿いに計18台のカメラトラップを設置し、対象種の撮影時間データを取得した。このデータを用いて、時間の扱い方が異なる3つの解析手法、日周活動の重複度推定・時間的共起解析・出現時間差解析を行った。日周活動の重複度はカーネル密度の重複係数により推定した。共起解析はProbablistic co-occurrence analysis及びCheckerboard scoreを用いて1夜間の同時出現率を評価した。時間差解析はMulti-response permutation procedure(MRPP)を用いて行った。加えて、出現時間差を12h以内に設定したMRPP(上限付き時間差解析)も行った。
 解析の結果、全種間で日周活動の重複度は大きく、1ペアを除いて1夜間での共起・回避は示されず、時間差解析では全種間で集合が示された。すなわち、これらの解析からは時間的ニッチ分割は検出されなかった。しかし、上限付き時間差解析では、一部の種の組み合わせで回避が示された。これらの結果は、時間スケールによって天候や他種個体の匂いなど種の活動や種間関係に影響する要因が異なることに起因する可能性がある。時間的ニッチ分割を評価する際には、時間の扱い方が異なる複数の解析手法を扱うことが重要だと考えられる。


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