| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-044  (Poster presentation)

近畿大学奈良キャンパスと奈良県立矢田自然公園における 鳥類群集の解析
Analysis of bird communities at Kindai University Nara Campus and Nara Prefectural Yata Nature Park

*平川直樹(近畿大学)
*Naoki HIRAKAWA(kindai university)

鳥類は生態系の上位に位置し,自然環境の改変や管理放置による影響をもっとも受けやすい.今後,土地改変による影響を受ける可能性も考えられる.そこで本論文では,矢田丘陵中央部の2ヶ所を対象として,解析を用いて鳥類群集を保全することの重要性を明らかにする.桜谷ら(2008),片山ら(2012)の過去のデータを参考に近畿大学農学部奈良キャンパス(以下,近大とする)の調整池A周辺と奈良県立矢田自然公園(以下,矢田とする)の自然研究路Aコースで2017年4月から2019年7月まで,ラインセンサス法による鳥類調査を行った.出現した鳥類を草地・樹林地・水辺の環境別に割合を求め,トレンド解析,Shannon-Wienerの種多様度指数H’などの解析,QGIS2.18による鳥類の出現場所の分析,近大・矢田に出現した希少種の分析を行った.近大では1995年に27科53種,2018年度に28科64種出現した.矢田では2018年度に26科52種出現した.近大の1995年と2018年度の環境別出現割合を比較すると草地は9.88%低下し,樹林地は6.60%上昇した.また近大と矢田の2018年度の環境別出現割合を比較すると,近大は矢田よりも草地が4.93%高かった.トレンド解析より近大のキジは出現個体数が減少傾向を示し,ヤマガラ,シジュウカラ,シロハラ,キビタキ,アオジは増加傾向を示した.近大と矢田の2018年度のH’を比較すると,近大の方が鳥類のH’が高いと示された.ヤマガラ,キビタキは近大の1ヶ所,矢田の2ヶ所に集中分布した.希少種は近大にサシバ,サンショウクイ,ハイタカ,矢田にサンショウクイが出現した.近大の2018年度において草地の減少と,樹林地の増加が示されたのは,クズやケネザサの繁茂が鳥類群集に影響を与えたためと推察される.両調査地に出現した希少種は,いずれも環境が多様な場所に出現するため,希少種にとって重要な環境の一つになっていると考える.鳥類群集を保全するためには,近大はクズの防除とケネザサの刈り取り,矢田は植生管理が重要である.


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