| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-071  (Poster presentation)

アカスジカスミカメのフェノロジー変化によるイネとの相互作用の変化 【B】
Phenological mismatches between Stenotus rubrovittatus and Oryza sativa 【B】

*田村優衣, 大澤剛士(東京都立大学大学院)
*Yui TAMURA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.)

近年の気候変動により様々な種のフェノロジーが変化することで、従来の種間相互作用や生態系までもが変化することが示唆されている。今後のフェノロジー変化を予測することは、気候変動下における生態系への影響を予測する上で求められているが、フェノロジー変化を明らかにするのに十分な観測データがない種が多いという問題がある。そこで本研究は、有効積算温度と三角法によるシミュレーションによって、アカスジカスミカメ(Stenotus rubrovittatus)のフェノロジー変化および、その摂食対象であるイネ(Oryza sativa)との相互作用を推定することを試みた。秋田県において、日別気象データとアカスジカスミカメの有効積算温度を利用し、11年間のフェノロジー変化、さらには観測データがあるイネとの種間相互作用の変化も検討した。その結果、シミュレーションによって推定された相互作用、すなわちカメムシの摂食時期とイネの脆弱時期が一致した年は、実際にイネに対する農業被害が大きい傾向が得られ、推定結果は現実をある程度反映していると考えられた。気候変動による種のフェノロジー変化および種間相互作用への影響の検討は、観測データだけに頼らず、推定によっても行える可能性が示された。


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