| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-076  (Poster presentation)

スズタケ一斉開花・結実・枯死から3年間のスズタケ実生の成長と哺乳類との相互作用
Growth of Sasa borealis seedlings for three years after mass flowering, seed production and death, and their interactions with the mammals

*鈴木華実, 梶村恒(名古屋大学)
*Hanami SUZUKI, Hisashi KAJIMURA(Nagoya Univ.)

 ササは日本各地の林床で優占し、他の植物や動物との間で様々な相互作用を生じている。そのため、ササで特異的に見られる、長周期の一斉開花・結実・枯死現象は、林床を含む森林一帯の一大イベントであり、その生態系に大きな影響を及ぼすものと予想される。演者らは、愛知県北東部で2017年 (約120年ぶり) に発生したスズタケの一斉結実の翌年から、一斉枯死地に哺乳類の移動を制限する試験区を設置し、その内外でスズタケの更新状況を追跡するとともに哺乳類の生態調査を行い、生物間相互作用について検証している。本発表では、この3年間で得られた知見を示す。
 スズタケの発芽数は、結実の翌年 (2018年) は3.3本・m-2であったが、2年後 (2019年) になると53.1本・m-2と大幅に増加し、3年後 (2020年) は1.4本・m-2に激減した。この結果から、多くのスズタケ種子の発芽時期は結実から2年後、つまり休眠打破には2度の冬季が必要であることが示唆された。発芽は7下旬から始まって9月中旬にピークを迎え、チュウゴクザサ等の他のササ属種に比べて明らかに遅かった。発芽数の制限要因としては、GLM解析によって、野ネズミ (種子の捕食) および林床の日射量 (種子の乾燥) の影響が推測された。野ネズミの影響は、移動制限試験区の内外 (野ネズミの有無) における発芽数の有意差によって実証できた。実生は、5月中旬頃にその分枝や地下部からの新たな出稈が確認された。それらの1個体あたりの分枝本数および稈数は少なく、稈高は他のササ属種よりも著しく低かった。実生の死亡率は3年間の累積で18.2%となり、食害する哺乳類としては野ネズミ、ニホンノウサギ、ニホンジカが挙げられたものの、その出現頻度は低かった。なお、一斉結実の翌年に個体数が激増していたアカネズミ属の野ネズミ (アカネズミ、ヒメネズミ) は、その2年後においても概ねその数を維持していた。


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