| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-115  (Poster presentation)

フクロウの隔離個体群における個性およびその維持機構の検証
Personality in an isolated owl population and its mechanism of maintenance

*Haruka ONO(Hokkaido Univ.), Akira SAWADA(Hokkaido Univ.), Ryota MURAKAMI(Tokyo Univ.), Masaoki TAKAGI(Hokkaido Univ.)

動物の個性とは、環境や時間の変化を経ても個体内で一貫した行動傾向の個体差を指し、個性の変異は遺伝的な影響を受ける。したがって、個体群に維持される行動形質の多様性は乏しく、個性が検出されないことが想定される。個性の多様性が維持される機構については未だ詳細に解明されていない。隔離個体群において個性と適応度の関連性を解明できれば、選択が個性を維持することを示す証拠となる。そのため、我々は隔離個体群における個性について検証し、個性が個体の適応度に与える影響を調査した。
本研究ではまず、島嶼に隔離されたダイトウコノハズク個体群において、個体間の行動における一貫した差異(動物の個性)の有無を検証した。プレイバック実験によって野外環境下で雌雄の攻撃性を測定し、行動指標として用いた。次に、検出された個性に選択が与える影響を検証するために、パス解析を用いて行動と適応度(繫殖成績)との直接的な関連性を調べた。また、個性が子の養育行動への影響を介して繫殖成績に作用するかどうかも検討した。
その結果、一貫した攻撃性の個体差が検出され、雌雄双方で個性の存在が確認された。また、攻撃性は繁殖成績と直接的・間接的に関連していることが示唆された。攻撃的なオスのつがいは初卵日が早く、攻撃的なメスは一腹卵数が小さかった。さらに、攻撃性の高いオスは給餌する餌の多様性が高く、餌の多様性が高い巣では雛の体重が重かった。また、攻撃性の高いメスの給餌頻度は低かった。
ダイトウコノハズクの攻撃性は、オスでは繁殖成績に正の影響、メスでは負の影響を与えていた。雌雄で選択圧の方向が異なる性的な拮抗により、個体群内の攻撃性が平衡選択を経て維持されてきた可能性がある。本研究は、性的拮抗による平衡選択が個性の多様性を維持する機構であることを示唆する初めての研究である。


日本生態学会