| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-116  (Poster presentation)

ムラサキシジミとの共生はアミメアリに利益をもたらすのか?
Is mutualism with Narathura japonica butterfly benefit for an ant, Pristomyrmex punctatus?

*Kyoji MATSUMOTO, Hiroyuki SHIMOJI, Masaru K HOJO(Kwansei Gakuin Univ)

相利共生は広く自然界に見られる一般的な種間相互作用の一つである。これは種間で互いに利益を得られる関係である一方、その利益は状況依存的に変化する事が知られている。このため、利益の変動とその要因を明らかにする事は、相利共生関係の進化や安定性を理解する上で重要である。真社会性昆虫であるアリは様々な植物や昆虫と相利共生関係を結び、共生相手から栄養報酬を受け取る代わりに天敵からの防衛を行うことが知られている。しかしながら、このような相利共生関係の記載は多くあるにも関わらず、状況依存的な利益の変動を検証した例は少ない。本研究はムラサキシジミの幼虫とアミメアリの相利共生系を用いた飼育実験により、アリの栄養状態が共生によって得る利益に与える影響を明らかにする事を目的とした。まず、アミメアリ1コロニーから6つのサブコロニー (幼虫存在処理区と不在区をそれぞれ3つ) を作製した。これらを飼料中のタンパク質と炭水化物の比率を変更し高炭水化物条件、均等条件、高タンパク質条件の3つの条件で4週間飼育し、幼虫の在・不在区間でアリの生存個体数・次世代の生産数・人工飼料への採餌行動・幼虫への随伴個体数を比較した。その結果、幼虫の存在下では、高炭水化物条件では幼虫不在時の同条件に比べアリの生存個体数と次世代の生産数を増加させた一方、高タンパク質条件では次世代の生産数を減少させた。これらの結果は、ムラサキシジミとの共生はアミメアリの栄養状態に応じて利益が変動する可能性を示唆した。次に、栄養状態がアリの採餌行動に与える影響を調べた結果、高タンパク質条件での餌探索個体数や摂食量が高炭水化物条件に比べ増加した。これは、高タンパク質条件下でアミメアリはより多くの餌資源を求め採餌行動を活発化させる事を示唆する。以上の結果から、共生相手を選択できる実際の状況下におけるアリの栄養状態に応じた共生の利益や安定性について議論する。


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