| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-119  (Poster presentation)

風推定による採餌飛行時におけるコウモリのナビゲーション戦術の検討
Examination of navigation strategy of the echolocating bats during natural foraging by wind estimation

*仁賀佳史(同志社大学), 藤岡慧明(同志社大学), 後藤佑介(CEBC-CNRS), 依田憲(名古屋大学), 飛龍志津子(同志社大学)
*Yoshifumi NIGA(Doshisha Univ.), Emyo FUJIOKA(Doshisha Univ.), Yusuke GOTO(CEBC-CNRS), Ken YODA(Nagoya Univ.), Shizuko HIRYU(Doshisha Univ.)

夜間移動を主とし,音響情報に依存するコウモリには特有のナビゲーション戦略があると考えられる.また,コウモリのように空中を飛行している動物は絶えず風の影響を受けて移動しており,彼らが目的地にたどり着くためにその風に対してどのように対処しているのかを調べることは彼らのナビゲーション行動を解明する重要な手がかりとなり得る.本研究では,大規模空間におけるコウモリのナビゲーション戦略の解明に向け,先行研究(Goto et al 2017 Science advances)によって構築された風推定法をコウモリの経路データに応用し,採餌飛行時にコウモリが受ける風の推定を行なった.風推定法は大規模空間を移動するオオミズナギドリの経路データから経路上の風を推定した手法で,経路データから算出される対地速度ベクトルの分布を利用したものである.今回,推定に利用した経路データは2015年及び2016年に北海道苫小牧市にてGPSバイオロギングで4個体のキクガシラコウモリ(bat a,b,c,d)から得られたものであり,飛行速度はおおよそ4~5 m/sであった.推定された風向の最頻値はbat aでは南,bat b,dでは北東,bat cでは北となり,同時刻に気象台で計測された風向とおおよそ一致した.そして,この推定結果を利用し,コウモリの風に対する飛行戦略の検討を行なった.今回の推定結果では,コウモリは進行方向に対して-100°および100°~150°といった斜め後ろからの風を受けて飛行している区間が多く確認できた.また,コウモリは横風よりも少し後ろ側からの風を受けているときに飛行速度が速くなっている傾向が一部確認できた.今後,さらにデータ数を増やすとともに,飛翔するコウモリに横風がどのように作用するかを検討することで,コウモリの採餌飛行時における風に対するナビゲーション戦略を明らかにしていく.(本研究はJSPS科研費JP 19K16237,JP 18H03786,16H06542の助成を受けたものです)


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