| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-229  (Poster presentation)

苫小牧・和歌山・屋久島における二次遷移に伴う種組成や形質多様性の変化
Changes in species composition and functional diversity along the secondary succession in Japan

*近藤里莉, 小野田雄介(京都大学)
*Riri KONDO, Yusuke ONODA(Kyoto Univ.)

二次遷移の進行とともに、成長の速いパイオニア種が優占する森林から、資源利用効率の高い遷移後期種が優占する森林に移り変わる。気候条件は、森林の種多様性や形質多様性に大きく影響しており、緯度の低い温暖な地域ほど、種の多様性も形質の多様性も高い傾向がある。従って、二次遷移に伴う種組成の入れ替わりや、群集レベルの機能形質の変化も、温暖な地域ほど大きいと予想されるが、それを検証した研究はほとんどない。
本研究では、「温暖な気候帯の森林の方が、遷移に伴う種組成の変化や、群集の機能形質値の変化が大きい」という仮説を立て、日本国内の3つの調査地:苫小牧(冷温帯落葉樹林)・和歌山(暖温帯落葉常緑混交林)・屋久島(亜熱帯常緑広葉樹林)における、林齢の異なる20 m x 20 m調査プロット(既存のものと新規のものを合わせて各9~12個)について、胸高直径5 cm以上の個体の胸高周囲長と樹種データを統合した。そして、Sørensenの非類似度を同じ調査地の林齢の異なるプロット間で計算し、遷移に伴う種の入れ替わりの程度を評価した。また、各調査地で測定された既存の形質値をもとに、種の出現頻度で重みづけをした群集平均値を求め、遷移に伴う機能形質の変化を評価した。
林齢の異なる群集間の非類似度は、林齢差が広がるとともに増加し、その増加の程度は苫小牧よりも屋久島と和歌山において有意に高かった。つまり、遷移に伴う種の入れ替わりは温暖な地域の方が大きかった。全調査地に共通して、二次遷移の進行とともに、葉重/葉面積比や葉の強度の群集平均値は増加し、葉の窒素濃度の群集平均値は減少した。遷移に伴うこれらの機能形質の変化は、屋久島で最も顕著で、苫小牧では最も小さく、和歌山ではその中間であった。以上より、温暖な地域の森林ほど、遷移に伴う種の入れ替わりや、形質の変化が大きいことが示唆された。


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