| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-232  (Poster presentation)

冷温帯におけるニホンリスの営巣場所選択:複数の空間スケールによる評価
Drey site selection of Japanese squirrels in cool temperate zone: Evaluation at multiple spatial scales

*本田鈴香, 斎藤昌幸(山形大学)
*Suzuka HONDA, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

営巣場所の確保はニホンリスの個体群存続にとって重要な要素の一つである.ニホンリスが営巣する場所は複数の空間スケールで解析をおこなう必要がある.本研究では,冷温帯に生息するニホンリスを対象に,球状巣の営巣場所選択を景観スケール,林分スケール,単木スケールという3つのスケールで明らかにした.調査は,山形県庄内地方の森林地域でおこなった.2020年3月から5月に7本の調査ルートで,球状巣の探索をおこなった.また,この調査で確認された営巣木の一部を対象に,森林構造を調べるためのプロット調査を2020年8月から11月におこなった.景観スケールでの選択性を調べるために,営巣場所と環境要因(地形,水域からの距離,森林タイプ)の関係を一般化線形混合モデルによって解析した.林分スケールでの選択性を調べるため,営巣プロットと非営巣プロット間で平均樹高,平均胸高直径,立木本数に差があるかをWilcoxonの符号順位検定で解析した.また,単木スケールの選択性を調べるため,営巣木と非営巣木の間に樹高と胸高直径に差があるかをWilcoxonの順位和検定で,樹種構成比に差があるかをフィッシャーの正確確率検定で解析した.景観スケールの解析の結果,ニホンリスは営巣場所として落葉針葉樹林と常緑針葉樹林を有意に選択しており,常緑針葉樹林の方が相対的に重要な変数であった.林分スケールでは,営巣場所として立木本数の少ない林分が有意に選択されていた.単木スケールでは,樹高が高く,胸高直径が大きい木が有意に選択されていた.ニホンリスの営巣選択はスケールに応じて異なっており,営巣場所選択を複数のスケールで評価することは重要であると考えられた.


日本生態学会