| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-236  (Poster presentation)

分布拡大している先駆樹種アオモジと在来種カラスザンショウの皆伐地における競争
Competition between an invasive pioneer tree Litsea cubeba and a native pioneer tree Zanthozylum ailanthoides after clearcutting

*益田怜, 川口英之(島根大学大学院)
*Ryo MASUDA, Hideyuki KAWAGUCHI(Shimane Univ.)

 クスノキ科の落葉樹アオモジは近年、分布の拡大が報告されている。山陰地方で分布拡大している鳥取県大山町の広葉樹林皆伐地に調査区を設置し、アオモジと在来樹木の実生と萌芽の分布、成長、生残を8年後まで測定した。在来の先駆樹種のうちカラスザンショウの実生とアオモジ実生の分布、樹高成長、生残と死亡を解析し、在来種の更新への影響を考察した。
 実生の平均樹高、最大樹高ともにアオモジのほうが大きかった。アオモジの樹高分布は2山型に移行し、耐陰性も相対的に高いことを示唆した。樹高成長はサイズに依存し、アオモジではS字形を示し、2山型の樹高分布への移行に対応した。L関数を用いた分布解析の結果、アオモジの生残個体は調査区内で集中分布した。初期にみられた短い距離での集中度の高まりは時間とともに低下した。死亡個体も調査区内で集中分布したが、ランダムラベリングによりアオモジ全体の分布のなかでみると、集中分布しているのは短い距離であり、集中斑が明瞭でなくなったことに対応した。カラスザンショウの生残個体も調査区内で集中分布したが、アオモジに比べて短い距離での集中度が低かった。死亡個体も集中分布したが、カラスザンショウ全体の分布のなかではランダムまたは一様分布であった。両種は調査区内で同所的に分布したが、両種の分布のなかでは短い距離で排他的であった。死亡個体も両種の分布のなかでは排他的であった。両種の分布相関が短い距離で排他的であることは両種の発生場所が異なるか、アオモジの方が生き残ったことが考えられた。アオモジでは初期の小さな集中斑が、集中的で密度依存的な死亡により明瞭でなくなった。この小さな集中斑は種内競争を増大させるが、同所的に発生した他種との競争に生き残る可能性を高めるだろう。アオモジは高い伸長成長だけでなく、耐陰性や高い発生密度によって在来の先駆樹種の更新に影響していると考えられた。


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