| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-243  (Poster presentation)

UAV写真測量を用いた極東ロシア山岳性タイガにおける森林樹冠構造の評価 【B】
Characterization of forest canopy structure in montane tiga of Russian Far East using UAV photogrammetry 【B】

*Tung Dinh TRAN(Univ. Toyama), Semyon BRYANIN(IGNM FEB RAS), 和田直也(富山大学)
*Tung Dinh TRAN(Univ. Toyama), Semyon BRYANIN(IGNM FEB RAS), Naoya WADA(Univ. Toyama)

 ロシアでは近年,人間活動による違法伐採や気候変動に伴う森林火災等が原因となり,森林面積の減少や生態系機能の低下が懸念されている。同国では森林状況の情報不足や若・中齢林の管理不足が指摘されており(Petrov et al., 2019),アクセスの悪い立地における森林資源量の把握が課題となっている。この課題の解決のため,リモートセンシング技術の導入が行われているが,人工衛星をプラットホームとした画像の取得には天候や撮影頻度等の制約もあり,継続的なモニタリングには限界がある。本研究は,市販型ドローンを用いた長期モニタリングを想定し,写真測量による樹木サイズや樹木分布密度の推定が遠隔地においてどれくらい有効かを検証する目的で実施した。様々な森林タイプが保存されている極東ロシア・ゼーヤ自然保護区において,標高の異なる林分に3つの調査区(エゾマツ林・カラマツ林・混交林),さらに保護区外に森林火災後の調査区(シラカンバ再生林)1つを設定した。2019年8月にドローンを用いた空撮を実施し,その後画像解析により3Dモデルを作成,各調査区において1haを対象に林冠の構造から樹高と本数を計測した。検証用の地上調査は2020年9月に実施し,各調査地区内に50m四方のプロットを設定,DBH5cm以上の立木本数を全て計測すると同時に,4隅に分布していた林冠木を対象に樹高・DBHを測定した。さらに,シラカンバ再生林では2020年においても空撮を実施し,1年間における変化の検出を試みた。その結果,林冠木を対象とした立木本数の推定値は実測本数の約8割に相当した。樹高の実測値と推定値を保護区内の3林分で比較したところ,森林限界付近のエゾマツ林のみ推定誤差が大きく,その他はほぼ同じ値を示した。シラカンバ再生林では1年間に低木に相当するピクセル数の増大が顕著に見られた。これらの結果から,本手法の有効性を検討した。


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