| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-267  (Poster presentation)

花崗岩土壌上に成立したコナラ林のリン利用特性と土壌フォスファターゼ活性
Phosphorus-use Characteristics and Soil Phosphatase Activity of a Quercus serrata Forest Established on Granite Soils

*水上知佳, 澤田佳美, 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Chika MIZUKAMI, Yoshimi SAWADA, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto University)

フォスファターゼは有機態リンを無機化し、植物が利用できる形態に変化させる働きがあり、土壌微生物や樹木の細根から分泌される。これらは土壌フォスファターゼと呼ばれる。フォスファターゼの基質である有機態リンの主要供給源は葉リターであることから、その活性は土壌断面の位置や落葉時期に応じて変異すると考えられる。無機態リン量が少ない土壌に成立した森林では、土壌フォスファターゼ活性の分布や変動が樹木や土壌微生物のリン獲得戦略を反映している可能性がある。本研究は、リン可給性の低い花崗岩土壌上に成立したコナラ林において、土壌フォスファターゼ活性の垂直変化、落葉前後での変動を調べ、この森林におけるリン利用特性を明らかにすることを目的とした。
滋賀県大津市瀬田のリン可給性が低いコナラ林を調査地とした。落葉前3回、落葉開始後2回、土壌はリター分解の程度からL層、O層、A層にわけて採集した。また落葉開始後にフレッシュリターを採集した。実験室に持ち帰り、フォスファターゼ活性と易分解性のリン濃度を測定した。
土壌フォスファターゼ活性の垂直変化は、全期間を通してL層、O層で高く、A層で低かった。フォスファターゼの基質である有機態リン濃度はL層>O層>A層となり、活性と有意な正の相関を示した。これより、有機態リン量は土壌のフォスファターゼ活性を決定する重要な因子であり、植物遺体の分解が進む下層ほど有機態リンが少なくなるため、土壌フォスファターゼ活性が低下することが示された。
また、土壌フォスファターゼ活性は落葉開始後、O層とA層で上昇し、L層では変動しなかった。落葉は土壌有機態リンの存在量や分布を変化させ、土壌フォスファターゼ活性に影響を与えることが示唆された。


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