| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-268  (Poster presentation)

立山連峰国見岳における地形勾配に沿ったリター分解の空間的変異
Spatial variation in litter decomposition along a topographical gradient in Kunimi-Dake,Tateyama Mountains

*金子さやか, 和田直也(富山大学)
*Sayaka KANEKO, Naoya WADA(Univ. Toyama)

多様な植生から成る様々な生態系において、近年、炭素の動態に深く関わるリターの分解が注目されている。TBI(Tea Bag Index)法の開発(Keuskamp et al., 2013)により、全世界の様々な生態系においてリターの分解能が容易に定量・比較できるようになった。リターの分解は、気候要因の他、地形の変化に伴う植生や非生物的環境の違いによっても場所ごとに異なることが期待される。日本においては、森林帯を中心にTBI法を用いた研究が報告され(Suzuki et al., 2019)、一部に高山帯での結果が含まれているものの、高山帯における研究例は未だ少ない。本研究では、地形条件が及ぼすリター分解能の空間的な違いを明らかにするため、高山帯の地形条件の変化に応じて、TBI法を用いてリターの分解を調査した。
富山県の立山国見岳において、地形条件の異なる標高2370 m~2550 mの範囲に35箇所の調査区を設定し、植生調査を実施するとともに、ティーバッグ(緑茶及びルイボス茶)を地下8 cmに埋没した。2020年7月末から8月初旬に設置したティーバッグは、10月中旬に回収し、リター分解能の指標となる分解率(k)と安定化係数(S)を算出した。積雪深や地形情報は、ドローンを用いた空撮画像から数値標高モデル(DEM)を作成することにより推定した。
 その結果、k値とS値は植生タイプ間では明瞭に分類できず、地形的な要因が大きな影響を与えていた。決定木解析を実施したところ、k値では標高、傾斜量(1mメッシュ)、斜面方位(5mメッシュ)が、S値では傾斜量(5mメッシュ)、凹凸度(5mメッシュ)、標高が、それぞれを区分する要因として選択された。しかし、選択された要因とk値又はS値が、期待される値と逆になる分岐も見られた。この原因について、流水等による可溶性有機炭素の溶脱の観点から考察を行った。


日本生態学会