| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-273  (Poster presentation)

蛇紋岩地帯に生育するコケ植物の重金属蓄積
Heavy metal accumulation of moss plants in serpentine areas

*石川結子(酪農学園大学), 畑中朋子(酪農学園大学大学院), 保原達(酪農学園大学, 酪農学園大学大学院)
*Yui ISHIKAWA(Rakuno Gakuen University), Tomoko HATANAKA(GSDS, Rakuno Gakuen University), Satoru HOBARA(Rakuno Gakuen University, GSDS, Rakuno Gakuen University)

蛇紋岩地帯に生育するコケ植物の重金属蓄積
Heavy metal accumulation in moss plants serpentine areas
石川結子¹ 畑中朋子² 保原達¹ ²   ¹ 酪農学園大学 ² 酪農学園大学大学院

蛇紋岩土壌は他の土壌に比してMgが多く含まれるほか、NiやMnなどの重金属も多い特徴を持つ。コケ植物は重金属に対して、高等植物には見られない高濃度の蓄積機構を持った種が存在することが知られている。しかしながら、蛇紋岩土壌のコケ植物における重金属蓄積やコケ植物が基盤とする基物との関係に関する研究は非常に少ない。そこで本研究では、蛇紋岩地におけるコケ植物体の化学的特性と直下の土壌との関係を明らかにすることを目的とし、北海道内の様々な環境タイプの蛇紋岩地において生育するコケ植物と土壌を採取し、諸化学特性を分析した。
調査地は穂別町坊主山、北海道大学天塩研究林、幌加内町添牛内、和寒町、温根別町、下幌加内町に設け、周辺環境を環境タイプに分けて、環境タイプ毎に植物および直下の土壌を採取した。植物体試料については採取後さらに、鉛直方向に上から緑色の部分、茶色の部分、遺体などが堆積した部分に区別した。その後、植物は酸分解、土壌は抽出をそれぞれした後、元素分析に供した。
その結果、コケ植物の中でも特にギボウシゴケ科が、最も多くの調査地で確認され、植物体への蓄積にも特徴が見られた。ギボウシゴケ科はどの場所でもMg、Ni、Mnが他植物に比べ多く、他の陽イオン元素との比で見ても他植物より高い傾向にあった。さらに、多くのコケ植物ではMgや重金属は茶色の部分やそれより下に多く含まれていたが、天塩で採取したギボウシゴケ科では、同じ条件下で採取したシッポゴケ科と比較して緑色の部分でも茶色に匹敵するかそれ以上の高い濃度が見られることもあった。これらのことから、同じような土壌環境下でもコケ植物は科によって多様な蓄積様式を示し、特にギボウシゴケ科は蛇紋岩環境に適応していると考えられた。


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