| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-279  (Poster presentation)

ハナカミキリ-酵母共生系の多様性:幼虫食性と酵母の種特異性
Diversity of the lepturine beetle-yeast symbioses: relationships between larval feeding habits and yeast species

*岸上真子(名古屋大), 笹倉靖徳(筑波大・下田臨海), 山迫淳介(農研機構・農環研), 湯澤宣久(日本甲虫学会), 土岐和多瑠(名古屋大)
*Mako KISHIGAMI(Nagoya Univ.), Yasunori SASAKURA(Tsukuba Univ.), Junsuke YAMASAKO(NARO), Nobuhisa YUZAWA(Coleopt. Soc. Japan), Wataru TOKI(Nagoya Univ.)

昆虫は最も多様化した動物で、他の動物が利用できない資源も利用する。樹木の材は豊富に存在するが、難分解性で利用困難な資源である。材依存性昆虫の多くは、微生物との共生により材を利用できるようになったと考えられているが、材依存性昆虫-微生物共生系の実態はほとんど未解明である。ハナカミキリ亜科およびホソコバネカミキリ亜科(コウチュウ目カミキリムシ科)の幼虫食性は多岐に渡り、多くの種は材を利用する。一部の種において、メス成虫の産卵管基部の袋状器官(盲嚢)より酵母が見出されていること、幼虫の消化管に酵母が貯蔵されていることから、ハナカミキリと酵母の共生が考えられる。一部の種の幼虫は、材ではなく樹皮や草本を利用する。各餌資源の利用しやすさは異なることから、酵母との共生の有無や共生酵母の種類は、ハナカミキリの幼虫食性に応じて異なる可能性がある。本研究は、盲嚢は酵母を保持するために特殊化した器官か、共生酵母は材の資化能力をもつか、共生酵母の有無や種特異性が幼虫食性と関係するかを明らかにするため、ハナカミキリ亜科5族43属75種とホソコバネカミキリ亜科1属3種のメス成虫を採集し、盲嚢より酵母を分離した。その結果、ハナカミキリ亜科4族36属50種から酵母15種が分離され、盲嚢は酵母と共生する種で発達していた。29種は酵母1種と共生し、21種は酵母2から4種と共生していた。頻繁に分離された酵母8種について炭素源資化性を調べたところ、いずれの酵母も材に多く含まれるキシロースを資化可能であった。共生酵母の種は、幼虫食性(材・樹皮・草本)を同じくするハナカミキリ種間で重複し、異にする種間で異なった。以上より、ハナカミキリは、材の成分を分解する酵母と共生し、盲嚢を介した垂直伝播により共生関係を維持してきたこと、酵母との共生の有無や種特異性は、ハナカミキリの種や寄主植物と関係することが示唆された。


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