| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-282  (Poster presentation)

集団ゲノミクスによるニホンミツバチの遺伝構造と地域適応の評価
Evaluation of genetic structure and regional adaptation in Japanese honeybees by population genomics

*若宮健(東北大学), 上岡駿宏(東北大学), 石井悠(東北大学), 高橋純一(京都産業大学), 前田太郎(農研機構), 河田雅圭(東北大学)
*Takeshi WAKAMIYA(Tohoku Univ.), Takahiro KAMIOKA(Tohoku Univ.), Yuu ISHII(Tohoku Univ.), Jun-ichi TAKAHASHI(Kyoto Sangyo Univ.), Taro MAEDA(NARO), Masakado KAWATA(Tohoku Univ.)

ニホンミツバチは、アジア地域に広域分布するトウヨウミツバチの1亜種で、北海道を除く本州、九州、四国および一部の離島に分布している。日本列島はミツバチ属の種の自然分布域の中でも比較的寒冷な地域であり、さらに、日本列島の内部においても、積雪、降水量、日照時間などの環境条件が異なる多様なバイオームが形成されている。これらのことから、日本列島の持つ特殊な環境条件が、本種の独自の地域適応や進化を駆動してきたことが予想される。しかしながら、これまでの研究では、ニホンミツバチの集団内の地域性や遺伝的多様性の詳細は明らかになっていない。本研究では、日本列島の全域から採集された計105個体のニホンミツバチを対象とした全ゲノムのリシーケンス解析を実施した。ADMIXTUREおよびPCAによる集団の遺伝構造の評価の結果、日本列島内の集団は、北部(東北・関東・中部地方)、中間(中国地方)、南部(九州地方)で異なる遺伝的分化を持ち、近畿および四国地方の個体では、各祖先型が混成した遺伝的組成が確認された。また、複数の地域で、個体群の移入との関連が示唆される遺伝的組成を持つ個体の存在が確認でき、本亜種に対する人為的な影響を可視化することができた。次に、地域特異的な分化(Population Branch Statistics)および環境変数との相関(LFMM)を指標とし、地域適応と関連する候補遺伝子をゲノムワイドに探索した。得られた候補遺伝子の中には、概日リズムやエネルギー代謝と関連する遺伝子のほか、免疫、神経、骨格系などと関連する機能遺伝子が含まれていた。本研究で得られた成果は、本亜種の形質-遺伝相関を解明する基礎研究および保全や農業利用を目的とした応用研究など、多方面への接続が期待できる。


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