| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-351  (Poster presentation)

外来種コセンダングサの種子が在来飛翔性昆虫に与える影響
Effects of seeds in an exotic plant Bidens pilosa on endemic flying insects

*深沢和磨, 高橋大輔(長野大学)
*Kazuma FUKASAWA, Daisuke TAKAHASHI(Nagano Univ.)

コセンダングサはキク科の1年生植物であり、北米を原産とする国外外来種である。本種は、競合を通じて在来草本植物に悪影響を及ぼすため、環境省では要注意外来生物に指定されている。本種は、一般的に「ひっつき虫」と呼称される痩果を秋季に形成し、動物の体毛などに付着して種子散布を行う。発表者らの予備観察の結果、本種の痩果にトンボ類などの飛翔性昆虫が絡まり死亡することがわかっている。今回、コセンダングサの痩果が飛翔性昆虫に及ぼす影響を明らかにするために、2020年10月から11月にかけて長野県上田市を中心に平地部の32地点において本種の痩果に付着する飛翔性昆虫の現状を調べた。調査の結果、痩果に絡まる飛翔性昆虫が8種317個体確認され、特にトンボ科アキアカネ(61.5%)とナツアカネ(34.7%)がその大半を占めた。確認された昆虫の多くは痩果から逃れようと動くために翅部が破損しており、そのほとんどは逃れることができず、数日後に死亡が確認された。また、アキアカネの付着数が多かったエリアはため池脇のコセンダングサ群落であった。以上の結果から、今回確認された飛翔性昆虫はコセンダングサの種子散布者の役割を担うのではなく、偶発的に本種の痩果に絡め取られており、特にトンボ類など翅部が薄くて破損しやすく、かつ止まり木を利用する昆虫がその被害を受けやすいことが示唆された。また、今回最も多く確認されたアキアカネは、秋に交尾産卵する生活史を持つことから、コセンダングサに付着したアキアカネの多くは成熟個体であると推察される。このような成熟個体の減少は、本種の個体群に深刻な被害を与えるだろう。近年、その個体数の減少が相次いで報告されているアキアカネの減少要因として、従来より指摘されている水田の乾燥化や農薬散布などに加え、外来植物であるコセンダングサの影響についても考慮する必要があると思われた。


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