| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-361  (Poster presentation)

戸台川下流域における攪乱後の植生変化及び希少植物群落の立地環境との関係について
Relationship between vegetation changes after disturbance and the location environment of rare plant communities in the lower Todai River

*小島樹, 大窪久美子(信州大学農学部)
*Tatsuki KOJIMA, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

戸台川は仙丈ケ岳の麓に位置する山岳河川で、河辺植生には石灰岩地に固有のトダイアカバナや河川固有植物のカワラニガナなどの希少植物が確認されており生物多様性保全上、特に重要な地域である。しかし、2019年と2020年の台風や豪雨により、本河川では大規模攪乱が生じ河床環境の変化を確認した。そこで本研究の目的は希少種を保全するため、これらや外来種を含む群落および立地環境条件の現状を把握し、新たな保全策の検討を行うこととした。調査は出現種の現状を把握するためのフロラ調査、代表的な植物群落を対象に群落調査、成立要因を明らかにするための立地環境調査(相対光量子束密度、土壌硬度、基質、水面からの比高・距離)が行われた。フロラ調査では、区画1で139種、区画2で99種、全出現種数157種が出現した。最も優占度が高かった種は、区画1でケヤキ、区画2ではシラカンバ、コゴメヤナギであった。群落調査では全54プロットで92種が出現した。またTWINSPAN解析の結果、全調査プロットは8群落型8種群に分類された。前述の8群落型と立地環境調査を用いたDCA解析の結果、草本群落とフサフジウツギ群落で分かれ、草本群落は1軸の左側に、フサフジウツギ群落は右側に配置した。1軸と土壌硬度、基質、相対光量子束密度(地際・1m)、比高で負の相関がみられた。昨年の調査(松野・大窪2020)ではフサフジウツギとカワラニガナは重複分布し、両種は競合する関係性がみられたが、今年は土壌硬度や比高、基質(礫の割合)が高い場所で後者は分布し、前者とは棲み分けしていた。しかし、両種の生育適地は重複すると考えられるため、再び競合関係となる可能性が指摘された。今後の対策としては、希少種が生育可能なセーフティサイトの確保のためのモニタリング、外来種の新規侵入防止と分布拡大の抑制のための早期駆除をしていく必要があると考えられた。


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