| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-374  (Poster presentation)

魚類の死後経過時間がeDNAの分解速度に与える影響
Effect of elapsed time since death on the decay rate of eDNA in fish

*廣原嵩也(龍谷大院 理工), 山中裕樹(龍谷大 先端理工)
*Takaya HIROHARA(Grad. Sch., Ryukoku Univ.), Hiroki YAMANAKA(Ryukoku Univ.)

 環境DNA(eDNA)分析が近年注目を集めており、非侵襲的かつ広範囲な調査を実施でき、種の在不在を推定することが可能である。だが、死体由来のDNAや、鳥の糞を介することで持ち込まれたDNAを検出している可能性もあり、eDNA分析での陽性検出は調査時に対象種が存在したとする証拠にはなりえないことが示唆されている。このような偽陽性の課題を解決する糸口となるのではないかと注目されているのが、標的配列の長さである。短いDNA断片よりも長いDNA断片の方が計量魚探との相関がよく、漁港や死体の影響を除去した結果を得られる可能性があり、種の真の存在を示すための重要な要素であることが示唆されている。したがって、環境中のDNA断片の長さは技術の最適化や動態を理解するにあたり重要な要素となりえる。しかし、これまでの分解に関わる研究は、生体由来のものが多く死体由来のeDNA分解は明らかにされていない。そのため、本研究では死体に注目しeDNAがどのように放出、分解されていくのかをDNA断片の長さも含め検討した。
 実験はアユ(Plecoglossus altivelis altivelis)の死体/生体を投入した水槽で行い、アユを対象とした増幅長の異なる9種類のqPCRアッセイを開発しeDNA量を定量した。生体水槽からの採水は実験開始から24時間後に実施、死体水槽からの採水は死体投入から24、48、72、96時間後に実施し、それらのサンプルを0、24、48、72時間後にろ過しDNA抽出を行った。
 結果、死体由来のeDNAは生体由来のeDNAと大きく異なる動態を示し、死後経過時間によっても放出されるeDNAの動態が変化していくことが示唆された。本研究によって得られたような死体側からのeDNA動態に関する知見は、結果の解釈を容易にする可能性を秘めており、eDNA分析のさらなる発展の重要な基盤となる。


日本生態学会