| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-376  (Poster presentation)

耕作放棄地発生の空間計量モデルによる生物多様性保全の可能性
Possibility of Biodiversity Conservation by Spatial Econometric Model of the Occurrence of Abandoned Cultivated Land

*松本光生, 田中勝也(滋賀大学)
*Mitsuki MATSUMOTO, Katsuya TANAKA(Shiga Univ.)

 本研究の目的は、滋賀県の営農集落の耕作放棄の規定要因を推定するとともに、耕作放棄の発生に関する考察から生物多様性保全の可能性を検討することである。そのために、2015年農業センサスを元に作成したデータGISを用いて耕作放棄の空間的集積性を可視化した。続いて、空間的自己相関を考慮した計量経済モデルであるSARAR(1,1)モデルで耕作放棄規定要因の推定を行なった。その結果、耕作放棄の発生には統計的に有意な水準で正の空間的自己相関があることが示された。このことから、耕作放棄地の規定要因の推計において、近隣との空間的依存性を考慮したモデルを使用するのが望ましいことが示唆された。個々の説明変数を見ると、高齢化率、大規模農家率、年齢多様性(HHI)、稲作比率、寄り合いの開催回数が耕作放棄の発生要因として有意な値を示した。高齢化率、年齢多様性については正の係数をもち、変数の値が上昇すれば耕作放棄も増加することが示された。逆に大規模農家率、稲作比率、寄り合いの開催回数については負の係数を持ち、変数の値が上昇すれば耕作放棄の発生は抑えられることが明らかになった。
 これらの結果をもとに、将来的な人口予測に基づく耕作放棄発生の予測を行い、耕作放棄問題を抑えるための施策の提言とそこから考えられる生物多様性保全の可能性を検討した。


日本生態学会